日本の軍需産業が不安? 3年で緊密化した日印関係、中印などそれぞれの見方

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 この3年ほどで、日本とインドの協力関係が急速に深まっている。経済や安全保障など様々な面で連携が進むが、これらは南シナ海で勢力を増す中国への対抗を強く意識したものだ。これまでにどのような協力関係が生まれ、中国はそれをどう捉えているのだろうか?

◆政治・経済など幅広い分野でインドと連携
 インドのミント紙は、日印関係が良好であり、過去3年間で急速に強まってきたことを歓迎している。先日インドの高速鉄道の起工式に日本から安倍首相が参列したことは大きく報じられたが、それ以外にも日印原子力協定の調印、日米印の対話の閣僚級への格上げ、日豪印での外相級の新たな3国関係のスタートなど、強力なパートナーシップが築かれてきている。

 幅広い協力関係だが、第三国であるシンガポールのストレーツ・タイムズ紙(9月19日)も、合理的な体制と評価しているようだ。シンガポール大学の研究機関の客員研究員の分析として、「先進的な日本の技術と、インドの素晴らしい科学的資質および人的資源との融合を象徴しており、大変意義深い」との見方を伝えている。

 一方で不安要素として、冒頭のミント紙は日印の貿易額が低水準に留まる点を指摘する。また、かつてインドのパートナーであったロシアと違い、日本には強力な軍需産業がないことも不安視しているようだ。とはいえ、このような懸念の声はあるものの、日印のパートナーシップは大局的には良好だと各紙見ているようだ。

◆友好の陰に、中国という共通の課題
 ストレーツ・タイムズ紙は、日印の急接近は中国という共通の脅威によるものであることに注目している。南シナ海の領有権問題に悩む日本と同様、インドも中国との国境紛争を抱えている。また、中国の一帯一路構想に対して日印はアジア・アフリカ成長回廊を発表し、両陣営はライバル関係にある。

 領有権問題については、フォーブス誌が掲載するフリージャーナリストのラルフ・ジェンイングス氏の記事が、やや極端な見方をしている。同氏は、日印の使命は、ベトナムなど海洋で中国の脅威にさらされている国に対して武器を売り込むことではないかと考えているようだ。

 日印接近の動機としては、ミント紙の見解も面白い。記事では、日印ともかつての同盟国への信頼が低下し、信頼できる新たなパートナーを互いに求めていると見る。日本はトランプ氏の大統領就任で関係に危機感を抱き、インドも盟友だったロシアと距離が生まれていた。中国、ロシア、アメリカ、アジア諸国など、日印の接近には複合的な要因があるようだ。

◆中国は日印の協力をどう見ているのか?
 多かれ少なかれ中国を意識している日印だが、当の中国はどのように感じているのだろうか? 中国紙・環球時報の国際版である『グローバル・タイムズ』では、西華師範大学准教授の龙兴春(Long Xingchun)氏による論説を掲載している。氏は日印の協力関係を好意的に評価しているようだ。長らく世界第2位の経済力を持っていた日本は商品の輸出先を求め、インド側も投資や技術ノウハウなどを望んでいる。これら2国の組み合わせは非常に大きなポテンシャルを秘めていると感じているようだ。

 日印が進める成長回廊のコンセプトについても、中国の一帯一路構想と何ら対立するものではないと記事では論じている。一帯一路の真の目的は各国を結びつけることであり、成長回廊はその目的に貢献できると期待をかける。記事では一部、インドのインフラを20年前のレベルと切り捨てたり、日本が中国に関してインドをミスリードしていると主張したりするなどの場面もあるが、おおむね日印関係を肯定的に捉えているのが印象的だ。

 ただし、先に挙げたフォーブス誌の寄稿記事では、中国側の比較的穏やかな姿勢は今だけかもしれないとも予想している。10月18日の共産党全国大会に向け、余計な緊張を避けている可能性があるとのことだ。党大会以降には海の領有権の主張も含め、再び活発な姿勢に戻ると記事では分析している。10月以降の中国の出方によっては、日印関係にも新たな動きがあるかもしれない。

Text by 青葉やまと

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