北朝鮮ミサイル発射、アメリカにも動揺広がる 米政権の対応策、各メディアの見方は?

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 15日朝、北朝鮮が再びミサイルを発射し、北海道上空を通過した。大きな影響を受ける日本と隣国韓国の動きが米メディアでも伝えられている。また、太平洋におけるアメリカ軍の拠点であるグアムへの攻撃を意図したと見る米紙もあり、実験を繰り返す北朝鮮に対する警戒感が世界的に強まっている。開戦への動きがあるのではとの観測も一部にあるようだ。

◆ミサイルで即時対抗する韓国 米国にも不安広がる
 ミサイル発射に伴い、日本ではJアラートが発動した。ニューヨーク・タイムズ紙では、北朝鮮がこの道を進むならば明るい未来はないと分からせる必要がある、との安倍首相の発言を引用している。直接の脅威にはならないとして、日本は撃墜など実効的な措置を取っていない。

 一方韓国は、今回の発射に即座に反応した。CNNによると、韓国は「実弾演習」として、発射台のある北朝鮮の空港を攻撃する能力のあるミサイルを打ち上げた。当局は北朝鮮の打ち上げに対して軍事力を誇示する目的があると明かしたようだ。

 アメリカへの影響については、懸案だったグアムの米軍基地とは別の方向に射出されたため、直接の被害はないとワシントン・ポスト紙が報じている。

 しかし、今回の飛行距離はグアムの米軍基地までの距離をわずかに上回る数字であった。このことからニューヨーク・タイムズ紙では、依然としてグアム攻撃が念頭にあると見ているようだ。グアム基地は朝鮮半島有事への対応の要となるべき場所であり、アメリカにも焦りが広がる。相次ぐ核・ミサイル実験に世界各国が手を焼いている状況だ。

◆制裁への反発でエスカレート
 今回のミサイル実験はアメリカが北朝鮮への追加制裁を発表した数日後というタイミングであり、ニューズ・ウィーク誌は制裁への反発と見ているようだ。

 ニューヨーク・タイムズ紙でも同様に日程の近さに注目し、安保理決議に対する北朝鮮からのアンサーだとしている。制裁は必ずしも効果的ではなく、同紙はアメリカのある諜報部員の見解として、北朝鮮がミサイル開発中止の交渉に応じることがあるとすれば、アメリカを攻撃できる能力が固まってからだろうとの見通しを伝える。北朝鮮は米国との実質的な均衡を確立すると以前表明していた。

 同紙は北朝鮮側の発言をいくつか報じている。「帝国主義の侵略者であるアメリカを壊滅させる時が来た」「アメリカ本土を灰と暗闇に変貌させよう」と挑発するほか、日本に対しても「列島の4つの島々は核爆弾で海に沈むだろう」と好戦的態度を崩さない。経済制裁による孤立戦略は、現状のところ北朝鮮を刺激する結果となっているようだ。

◆有事への展開はあるか? 見解を異にする各メディア
 CNNは今年2月から今回までに北朝鮮が14回21弾のミサイル実験を行っているとし、急速なペースに警戒を示す。アメリカ側の動きとしては、あくまで経済制裁による「平和的圧力」を続けると同メディアは見ている。北朝鮮としても核を使えば勝ち目のない戦争が始まることから、両者直接攻撃には至らないだろうとの見解だ。

 一方ニューズ・ウィーク誌は『北朝鮮と日本は戦争へ?』との刺激的なタイトルの記事を掲載している。また、「fire and fury(炎と怒り)」で対応するとのトランプ政権の過去のコメントにも触れ、開戦の危機が迫っているのではないかとの見方だ。

 ニューヨーク・タイムズ紙も、トランプ大統領の補佐官の考えとして、アメリカは先制攻撃も辞さないという構えを報じている。ただし事態をエスカレートさせ、日米韓を危険に晒す危険性も認識しているとのことで、推移を慎重に判断するものと思われる。

 ワシントン・ポスト紙では現在の経済制裁を「上限ではなく下限に」したいというティラーソン国務長官の意思を伝えており、当面は経済制裁の強化が中心になると捉えているようだ。石油供給を続ける中国と労働者を受け入れるロシアに対して政権は不満を顕にしており、中露への働きかけが続くことだろう。

 日本ではミサイルの脅威の高まりを肌で感じるが、遠くアメリカでも不安が広がっているようだ。

Text by 青葉やまと