韓国THAAD追加配備、反対派と警察の間で衝突 数十名が負傷

Lee Sang-hak / Yonhap via AP

【ソウル市・AP通信】 北朝鮮の脅威に対応するため最新鋭防衛ミサイルシステムが配備されている韓国南部の町に、9月7日、米軍がその発射台を追加配備した。同日、それに抗議をおこなった韓国の活動家と警察との間に衝突が起こり、数十名の負傷者が出た。

 韓国は北朝鮮の度重なる兵器開発のための実験後、北朝鮮に対する態度を硬化してきた。最新の実験は、北朝鮮が9月3日におこなった米国本土まで到達可能なミサイルに搭載できる熱核兵器(水素爆弾)の実験だ。

 韓国の活動家と警察との間の衝突が起こった時、韓国の文在寅大統領と日本の安倍晋三首相はロシアの極東で会談し、北朝鮮の核への野望をめぐり、石油供給の拒否などの制裁強化の要求を繰り返していた。制裁の要求は、会談の主催国であったロシアのウラジーミル・プーチン大統領の制裁が解決策とは考えないという姿勢と矛盾したものであった。

 プーチン大統領は、米国のドナルド・トランプ大統領率いる政権は、北朝鮮の核への野望をめぐる緊張を和らげようとしていると確信していると述べた。3日の北朝鮮による6回目の核実験により、米国は「軍事的報復」について話しはじめ、韓国は大規模な軍事演習をおこなうことになったのだ。

 ロシア東部の港、ウラジオストクでの経済フォーラムで、プーチン大統領は7日、米国のトランプ政権は「現状を解決しようとしている」と発言した。プーチン大統領は、似た危機を経験し、対応してきた「多くの理性的な人々が現在の政権にいる」とも発言した。

 プーチン大統領は、全ての北朝鮮の近隣諸国に対して、好戦的な言葉や軍事演習をおこなうことは「彼らの思うつぼだ」と言い、自制をするように呼び掛けた。

 韓国文大統領の主任報道担当官であるユン・ヨン・チャン氏は、文大統領と安倍首相は会談の中で北朝鮮に対する国連の制裁を強化することを求めていくことで協力することで合意し、中国政府とロシア政府が北朝鮮に対する石油供給を断ち切るよう説得する努力を強化すること嘆願したと述べた。また、これに対してプーチン大統領は、石油供給を断ち切ることは北朝鮮の一般の人々を苦しめることになると懸念を示したとユン氏は語った。

 プーチン大統領は文大統領と会談した後の記者会見で「私達は感情に屈して、北朝鮮を窮地に追い込んではいけない」と発言した。ロシアのリーダーは安倍首相とも後に話し合った。

 中国外務省の耿爽報道官は、韓国がサードという名称で知られている高高度迎撃ミサイルシステムを配備したことに、中国政府が反対している意向を繰り返し伝えた。中国政府は、そのシステムの強力なレーダーは中国の北東地方での飛行機やミサイル発射の動きまでも監視することが出来ると述べた。

 耿報道官は、中国は米国と韓国に苦情を申し立て、「中国やその他の近隣諸国の安全性への懸念や利害関係を真摯に受け止めるように」と要請したと述べ、米国と韓国は「直ちにサード配備を停止し撤退すべきである」と発言した。

 韓国では、何千人もの警察官が暴動鎮圧用の装備をして、サードが配備された地方の町、星州郡のサード配備地に向かう道路を占領した400人程度の活動家に群がっていた。星州郡の消防局職員は、職場の規則により匿名という条件付きで、衝突により6人の警察官と32人の市民が軽傷を負った、と発言した。

 黒いシートに覆われた発射装置とみられる貨物を運ぶトラックなど、数台の米軍車両が配備地に向けて移動したのが目撃された。

 サードの1個砲隊は、通常6基の発射台で構成され、48の迎撃ミサイルを飛ばすことができるが、このうち2基だけがこれまでは運用可能であった。韓国の国防部は、7日に追加配備された4基について、いつ運用可能になるのかすぐに返答することができなかった。

 米国と韓国は、韓国の保守政権が3月に汚職事件により失脚する前から、サード配備をはじめていた。5月に政権を握ったリベラルの文大統領は、北朝鮮に外交を求めたが、兵器の開発実験の深刻化が北朝鮮からの唯一の反応であった。

 文大統領は住民の懸念を軽減するための環境再調査を実施するとサード設置を一時的に休止していたが、北朝鮮が2回の大陸間弾道ミサイル実験発射を実施後、再調査前ではあるが、サード発射台の追加設置を許可した。

 韓国の政府関係者は、サードはこれまでのパトリオットミサイルに基づいたミサイル防衛システムを強化し、移動式発射台や潜水艦から発射できるミサイルを保有する北朝鮮を抑止できると言う。また、政府関係者は、サードのシステムの強力なレーダー部分が健康によくないという噂が人々の懸念に拍車をかけていることについて、それは根拠のない噂であり、そのような問題は他のサード配備地では報告されていないと言った。

By KIM TONG-HYUNG
Translated by Conyac

Text by AP