本当に水爆だったのか? 北朝鮮は目標に到達しつつあると専門家

Eugene Hoshiko / AP Photo

【東京・AP通信】 北朝鮮の最新の核実験は見世物的要素もあり、プロパガンダ的要素もあり、でっちあげ的要素も含まれているかもしれない。しかし、専門家は同時に、北朝鮮政府が本格的な核保有国になる目標を達成するために成されねばならないノウハウに精通している、という真実を誇示してもいるという。

 北朝鮮が主張するようにICBM(大陸間弾道ミサイル)に搭載するための水素爆弾の実験を本当に行ったのかどうかは今だ明白ではない。

 しかし、9月3日に行われた実験は2006年に北朝鮮が開始して以来、6回目の最も強力な実験であり、大型核爆弾を設計する能力があることを示す上で驚くほどの前進を遂げた。その爆発は、140キロトンから、これまでの想定よりもずっと深いところで実験が行われたとすると、潜在的にはその倍以上の威力があると考えられている。

 爆発の威力は重要である。

 今回の爆発はこれまで北朝鮮が行ってきた実験よりも最低でも10倍は強力なものであったことを証明している。これは、今回の実験が北朝鮮が主張するように水素爆弾であったのかどうかの重要な指針である。

 より正式には熱核兵器と呼ばれる水素爆弾は1950年代に起源を遡る。水素爆弾は、第二次世界大戦の終わりに米国により広島や長崎で使われた、より単純な核分離型爆弾と比べて、より強力な潜在性を持つ。1961年にソ連によって開発された人類史上最大の水素爆弾は「ツァーリ・ボンバ」と名付けられた。これは広島の原爆の3,800個分と等しいとされる50メガトンの威力であった。

 北朝鮮の実験は出力100キロトンレベルの推定であり、これは熱核兵器から想定できるギリギリの数値である。200キロトン以上という高い想定を主張する専門家もいるが、この推定はより水素爆弾の範囲内にある。

 実験を前に、北朝鮮の国営放送は金正恩代表が国家の優秀な核科学者達に囲まれて「二段階熱核爆発装置」を視察している様子を収めた写真を放映した。その兵器は大きさといいピーナッツの形といい、米国本土まで到達可能だと言う弾道ミサイルと組み合わせられ、もっともらしく核弾頭に固定される、よく知られたデザインとよくマッチしている。

 しかし、プロパガンダ写真は注意が必要である。

 「憂慮する科学者同盟」に所属する物理学者、デイビッド・ライト氏は「人々は(その装置が)実験されたと推測する、しかし誰も事実は分からないのだ」と発言する。彼は、実験の行われた爆弾の大きさやデザインについて現段階で発言することは不可能であると指摘する。

 もし実験により放射線が漏れたら、軍隊の放射性物質に反応する「探知」飛行機によって米国やその同盟国が北朝鮮が実際に何の実験を行ったのかを決定する助けになるだろう。

 ライト氏は「幸運にも、実験を行ったトンネルが崩壊したという報告は役に立つ情報を放出したことを意味するかもしれない」と言う。

 前イラク国連武器査察官であり、科学国際安全保障研究所の創設者であるデービット・アルブライト氏は、北朝鮮が水素爆弾を保有している、もしくは9月3日にその爆発実験を行ったとはまだ確信できていないと言っている。

 また、彼は「北朝鮮は私達が恐れていることを理解し、写真に写る物体はその恐怖心につけ込み、分裂を生みだし、彼ら自身の抑止力を継続させるためのモデルであったと考える」とも言う。

 今回はたとえモデルであったとしても、北朝鮮は二段階兵器の開発を進めていることは間違いないと彼は言う。なぜならば、爆発の出力は他のデザインのものよりもずっと大きなものであり、核分裂性物質はあまり必要なく、その細長い形は将来的にはミサイルの核弾頭に容易に設置できるからである。

 「北朝鮮は小規模の二段階熱核爆発兵器を開発するためには実験を重ねるための時間が必要であると考える」と彼は言う。更に、3日に行われた実験により北朝鮮がいつそのような武器を完成させるかという彼の想定は2年以内という期間に早まったと言う。

 他の専門家は北朝鮮が水素爆弾を所有しているという主張を、慎重に、しかしながら受け入れようとしていた。

 「彼らのミサイルと核実験に関する声明は、より詳細、正確、説得力のあるものになってきた」と言うのは、カリフォルニアのミドルベリー国際大学院モントレー校で上級研究教授を務めるジョシュア・ポラーク氏である。「彼らはこれまでの過程でより多くの詳細を見せてきた。この状況だけでも、彼らが真実を語っていることを示している」

 超大国は1950年代、1960年代に驚くべき頻度で地下核実験を行っていたが、北朝鮮は現在、地下核実験を行っている世界で唯一の国である。

 最初の地下核実験は1キロトン程度の爆発を伴う小さなものであったが、3年後の2回目の実験は1回目の装置のいくつかの問題を解決したより大きな規模のものであり、2013年のより野心的な実験の土台となった。2013年の実験は、初めて金正恩の指令によって行われた。4回目、5回目の実験は昨年実施され、北朝鮮が初めての水素爆弾の保有を主張した1月、そしてより強力な装置の保有を主張した9月であった。

 ポラーク氏は、今後もより多くの地下実験があるだろうと信じる。

 「新しいデザインや主な新しい特性は実験されなければいけない。米国は1,000回も実験したのだ! それに加えて、実験は米国の目を突くようなものであるからだ!」

 ポラーク氏は、北朝鮮が北東にある山岳地帯の豊渓里実験場の4つの山に4つのトンネルを開通させたと言う。初めのトンネルは一回だけ利用した後、使われていない。恐らくガス漏れがあり、当局が地学的に好ましくない場所であると考えたのであろう。その後、3日のものも含めた5回の実験は2つ目の山で実施された。他のトンネルはまだ利用されていない。

 前武器査察官であるアルブライト氏は、北朝鮮が出力10キロトン規模の複合コア爆弾を製造するためには、約2キログラムのプルトニウムと6~10キロの兵器の使用に十分な品質のウランが必要であろうと想定する。この製造特性からして、北朝鮮は約33キログラムの分離プルトニウムと175~645キログラムの兵器の使用に十分な品質のウランを保有していると言う。

 巨大な核兵器保有量というには不十分であるが、兵器庫を着実に拡大し、より多くの爆発を豊渓里で行うには十分である。

 ポラーク氏は、「より深刻な話し合いが米国との間で行われない限り、今後より多くの実験が行われると予期している」「しかし、実験自体を話し合いの形態の一つと言う人もいるかもしれない」と言う。

By ERIC TALMADGE
Translated by Conyac

Text by AP