潜水艦輸出レースに「そうりゅう型」再び? インドが6社に情報提供を依頼

Christy Hagen, U.S. Navy / Wikimedia Commons

◆「そうりゅう」を推す報道も
 インドは既にドイツの209型(シシュマール級)、ロシアのキロ型(シンドゥゴーシュ級)、フランスのスコルペヌ型(カルヴァリ級)を運用している。さらに、ドイツが設計した2隻、INSシャルキとINSシャンクールは、技術移転合意のもとインドで建造された(外交誌ザ・ディプロマット)。

 こうしてライバル国が既にインドで実績を重ねている中、2014年の武器輸出三原則の緩和を経て、武器輸出市場にデビューしたばかりの日本は苦戦が予想される。その一方で、既に「そうりゅう」に大きな期待を寄せる記事もある。ザ・ディプロマットは、『日本の三菱と川崎は、インドの次期P-75(I)AIP潜水艦を作ることになるか?』というタイトルの日本を名指しした記事を掲載。筆者のインド系記者は、「もし本当なら、日本の三菱・川崎共同事業体がインド海軍からRFIを受け取ったのは、素晴らしい展開だ」としている。

同誌が「日本推し」をする理由は「そうりゅう」の高性能に加え、近年急接近している日印の戦略的互恵関係の発展だ。一方、日本は現在、インドへのUS-2飛行艇の売り込みにおいて、価格交渉で難航中。交渉は行き詰まっているとも報じられているが、その進展が潜水艦契約の試金石になると見られる。ザ・ディプロマットは、「技術移転に対する政府のバックアップ」「安倍政権の熱心なサポート」を成功の鍵に挙げている。

◆中国・パキスタンを強く意識
 インド海軍は、インド洋への進出を重ね脅威を増す中国と、長年のライバルであるパキスタンを強く意識している。メディアの論調もその点ではっきりしており、インターナショナル・ビジネス・タイムズは、『見てろよ中国、パキスタン:インドは6隻の強力なステルス潜水艦を持とうとしている』という見出しでこのニュースを報じている。

 タイムズ・オブ・インディアは、インド、中国、パキスタンの潜水艦戦力分析を写真入りの表で紹介。それによれば、インドは現在、旧式の通常型潜水艦13隻、弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)1隻、攻撃型原子力潜水艦(SSN)1隻の計15隻を保有。これに対し、中国は5隻のSSBNを含む56隻と圧倒的で、パキスタンは5隻の通常型潜水艦にとどまるが、中国から8隻が追加供与される予定だ。

 中国は武器供与と合わせてパキスタン沿岸に軍港を建設するなど、同国をインド洋進出の拠点にしようとしている。この同盟に効果的に対抗するためには、インドには18隻の通常型潜水艦と6隻のSSN、4隻のSSBNが必要だとされている(タイムズ・オブ・インディア)。日米印は先日、インド洋で対中国潜水艦戦闘を強く意識した合同軍事演習(マラバール2017)を行ったばかりだ。インドの次期潜水艦選定レースが、日米印と中国の海の覇権争いに大きな影響を与えるのは必至だろう。

Text by 内村 浩介