中国最大のアフリカ人街で移民排斥広がる 成功夢見て中国に渡る人々と恐れる現地民

 1990年代から、高い経済成長を続ける中国で一旗揚げようと、国際貿易の拠点でもある巨大都市広州に渡るアフリカ人が増え始めた。ビジネスを始めた彼らは独自のコミュニティを作り中国に根を張るが、近年多くが非合法に滞在していると見られており、中国政府が厳しい取り締まりを行っている。また、市民からの差別や嫌がらせなども後を絶たないと報じられている。

◆強い中国とアフリカの関係が呼んだ移民
 サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)によれば、広州に住むアフリカ人は、中国とアフリカ諸国の関係を築くため2000年に始まった中国・アフリカ協力フォーラムなどがきっかけで移住してきた人々で、合法なビジネスマンだとしている。しかし、実際には多くの不法移民が滞在しており、その数は20万人と主張する人も中国国内にはいるという。広州市は、これまでその数を公表したことはない。

 デジタルニュース誌『Worldcrunch』が掲載した仏フィガロ紙の英訳記事は、広州のアフリカ人永住者は1万人から1万5000人、非合法で滞在する者は5万人近くだとしている。ウェブ誌『クオーツ』は、居住者全体で2万人から10万人ぐらいではないかと見ている。

◆景気低迷と厳しい政策で状況一変
 多くのアフリカ人が「アメリカンドリーム」ならぬ「チャイニーズ・ドリーム」を追って広州を目指すが、中国の経済成長の鈍化と、厳しい移民政策により、帰国するアフリカ人が増えつつあるという。工場やレストランを経営したり、安価な中国製品を母国へ輸出したりして成功した人々もいるが、近年は物価の上昇で利益も減少し、中国人との競争も激化しているという。また、2010年頃から景気の低迷に伴い、ビザも出にくくなっている。それでも成功を夢見て広州に来る若者もいるが、仕事を探すのは容易ではなく、数週間から数ヶ月で、アフリカに戻る者も少なくないという(フィガロ紙)。

 広州の小北地区は「リトル・アフリカ」として知られ、さまざまな商店が立ち並び、民族衣装のアフリカ人が歩く姿も見られるが、ここ2年ほどは当局の浄化対象地域となり、違法な店は閉鎖され、通りには番兵が常駐するようになったという(フィガロ紙)。SCMPは、2009年にナイジェリア人男性が警察のパスポートチェックを逃れるためビルから飛び降りて亡くなり、アフリカ人コミュニティの警察への抗議活動に発展した事件に触れ、以来不法移民問題に当局の目が行くようになったと指摘している。

 アフリカ人移民への対応をさらに厳しくすべきだという政府関係者もおり、中国人民政治協商会議の潘慶林委員は、中国の移民政策の抜け穴と中国とアフリカの友好関係に付け込むアフリカ人が広州に多く、社会の安全、公衆衛生、人種問題での懸念となっていると述べる。同氏は不法移民には強制送還、資産の凍結、重い罰金を提案しており、中国国民との間に出来た子供への市民権付与にも反対を表明している(SCMP)。

◆まだまだ多い、アフリカ人への偏見
 フィガロ紙によれば、広州は「チョコレート・シティ」と呼ばれるほどアフリカ人が多く、それをよく思わない市民も多いようだ。電車でアフリカ人が隣に来ると席を変わったり、アフリカ人の目の前で鼻をつまむ仕草をしたりするなど、あからさまな差別があるという。クオーツによれば、アフリカ系移民は犯罪者であると恐れる市民もいるという。

 広州のアフリカ系移民を扱った映画『広州ドリーム・ファクトリー』の製作者、クリスチアーヌ・バッドグレイ氏は、ダイナミックで起業家精神旺盛な広州のアフリカ系移民は、良い生活を求めているという点で、世界中の移民と何ら違いはないと述べる。欧米でさえ、メディアはほとんどアフリカ人の姿を正しく描いていないとし、ポジティブなイメージが伝わっていないことを問題視している(クオーツ)。

Text by 山川 真智子