“安倍とイヴァンカの間で!?” 会談を怪しむ米メディア トランプ氏の利益相反に批判集まる

 トランプ次期大統領の娘イヴァンカ・トランプが、自身の経営する婦人服ブランドと日本のアパレル会社サンエー・インターナショナルとのライセンス契約締結に向けた交渉を進めていることを現地メディアなどが問題視している。

 実は、サンエー・インターナショナルの親会社TSIホールディングスの筆頭株主は政府系金融機関である日本政策投資銀行。この契約は、大統領選の前から2年間にわたって交渉が行われてきたというが、ここに来て急激に進展したため、先月の安倍・トランプ会談が影響を及ぼしているのではないかと憶測を読んでいる。米国の批評家らは、“米大統領”という強力な立場と、彼の家族のビジネスとの間に利益相反が生じるのではないかと懸念している。

◆「イヴァンカがビジネスと政治を混同?」
 先月17日夜、安倍首相はトランプ次期大統領とニューヨークのトランプタワーで会談を行ったが、その際“なぜか”イヴァンカも同席していたとして話題になった。その際イヴァンカが安倍首相と交わした会話の詳細は不明だが、その内容が今回の契約に影響を及ぼしたのではないかと海外主要メディアは推測し、大きく取り上げた。

 米フォーチュンは、「イヴァンカ・トランプが会談に同席するのは、異常なことだ。無秩序に広がり続ける彼のビジネス帝国とホワイトハウスでの任務との間の利益相反をどのように防ぐのかという懸念が強まっている中、今回の件が起こった」と伝え、CNN Moneyは「イヴァンカ・トランプは日本でのビジネスと政治を混同している?」という少し刺激的なタイトルで本件について報じた。

◆トランプ自身はビジネスからの引退を発表したものの……
 敏腕実業家として様々な事業を長年手がけてきたトランプ氏。今年の大統領選で“まさかの当選”を果たした彼は、11月30日にツイッター上で「大統領任務に集中するために、私の素晴らしいビジネスから完全に引退する」と発表。少しずつ、政治とビジネスを切り離す努力をしているように見えた。

 しかし、そのビジネスの後継者はトランプの子どもたち(イヴァンカ・トランプ、エリック・トランプ、ドナルド・トランプ・ジュニア)。大統領選挙中は、トランプ氏とともに公の場に現れることが多かったため注目を集めた。兄弟揃って容姿端麗・成績優秀なトランプ家の子どもたちは、暴言・失言が多かったトランプ氏のイメージを向上させるという、選挙において非常に重要な役割を果たしていた。

◆世界各国との結びつきが強いトランプ氏の事業に批評家が懸念
 暴言王だがビジネスの手腕は天才的だったトランプ氏。そのため、とりわけ経済面で力を発揮することが期待されているようだが、これまで築いてきた“ビジネス帝国”が広大すぎることが様々な問題につながっている。世界的に事業を拡大していく中で、トランプ氏の各事業と諸外国との繋がりがより密接なものになっていったからだ。

 たとえば、今回のサンエー・インターナショナルは政府系金融機関が株主、そして「イヴァンカ・トランプの手がけるブランドの洋服部門のほとんどが、現在は中国・ベトナムの工場で製造されている」(CNN Money)。このような状況下では、ビジネス上の利害関係を利用して米国政治に働きかける国が現れる可能性も否定できない。

 ニューヨーク・タイムズ紙の記事も、イヴァンカがトランプのビジネスの後継者のひとりであること、そしてそのビジネスは世界各国と強い結びつきがあることを強調した。「たとえば、国際的ホテル・チェーン(トランプ・ホテルズ)は南米、欧州、北米に事業を展開している」。

 同紙によると、イヴァンカが副社長を務める不動産会社『ザ・トランプ・オーガナイゼーション』の公式ホームページには、彼女の重要な目標のひとつとして「“トランプ・ホテル”ブランドをグローバル市場で広めること」というメッセージが掲載されていたという。今後も積極的に“トランプ・ブランド”を世界展開していく意向があるようだ。

 英インデペンデント紙は、上記のような状況について次のような言葉で説明した。「トランプ氏の事業は、数え切れないほどの利益相反を引き起こしている。批評家らは、外国首脳がトランプ次期大統領の“財布”経由でホワイトハウスに影響を及ぼそうとするのではないかと懸念している」

 トランプ大統領自身は一切ビジネスから手を引くといっても、後継者は“いつも一緒”の子どもたち。批評家の指摘通り、政治とビジネスの利益相反については、もう一波乱ありそうだ。

Text by 月野恭子