政府が離婚をお手伝い…オランダの「離婚サイト」が人気に 垣間見える結婚観とは?

 何のために、人は結婚するのだろうか。愛する人と一緒になるため、世間体つまりステイタスのため、子どもができたため・・・などなど人によって差はあれど、人生最大のイベントでもある結婚。可能ならば生涯を添い遂げたい、と双方が誓うものの、他人同士が一緒になり、お互い愛し合い平穏無事に生涯を過ごすことは非常に難しく、残念ながら離婚というひとつの終結を伴うこともある。

 たとえばセレブの離婚報道は、結婚報道よりさらにセンセーショナルに報道される傾向にあるようだが、一般人の間でも離婚劇が日常茶飯に繰り広げられているオランダでは、有名人の離婚劇はあまり派手に報道されることがない。実際、カップルの3組に1組が離婚するといわれるこの国では、最近、離婚手続きの簡易化も進んでおり、オンラインで簡単に行なえる離婚手続が人気を呼んでいる。

◆離婚費用削減?
 通常、離婚協議は弁護士が間に入って慎重に行われるべきである。しかし、弁護士を雇うとなれば一件の離婚相談料として最低でも800ユーロ(10万円ほど)を支払わねばならない。その上、金銭問題の解決や子どもを巻き込んでの話し合いになると、カップルのお互いにとってストレスをもたらす負の要素が多くなるため、弁護士のみならずセラピストまでも雇う必要が出てくる。そうなれば、さらに費用が増すというわけだ。

 しかし昨年、政府(法務省)が制作・提供した「離婚サイト」を使えば、手続きが非常に簡単な上、費用も一般の約半分と非常にリーズナブルなため人気上昇中だ。その上、チャットを使って離婚協議が行なえる気軽さや簡単さも話題となっており、専属弁護士がオンラインで介入するシステムも魅力的と話題になっている。

◆なぜ、離婚に至るのか?
 気になる、離婚の最たる理由だが、最も多いのは金銭問題によるものだという。夫婦共働きが当たり前のオランダでは、各費用の捻出は夫婦で分担する。だが、たとえばどちらかが失職したり、転職によって給料が下がったりすれば、夫婦の一方のみに経済的負担がかかることになる。これが原因で婚姻関係もぎくしゃくし、離婚に至るというわけだ。

 また、相手選びを慎重にせず、少し気が合ったというだけで同凄したり結婚したり、年齢に関係なく男女とも非常に安易であることも否めない。加えて彼らは、世間体をあまり気にしない。アラサーだから婚活に励む、とか、アラフォーだから慎重に・・・など、年齢で我が身に制限を加えることもまったくない。これは、我が道を行く個人主義がしっかりと根付いている文化的背景もあるだろう。さらに、「誰にでも間違いはあるものだ。従って、離婚なんかで恥じるべきではない」と、我が身を正当化する傾向が強いのも、離婚を後押しする理由のひとつといえるかもしれない。

◆1度の人生
 しかし、離婚が男女間のみの問題ならまだ話はわかる。ところが、子どもがいた場合はどうするか。親の感情で翻弄される子どもたちこそ、いい迷惑である。こういった諸問題を手っ取り早く解決するために活躍するのが、この「オンライン離婚」といえるだろう。

 同棲も結婚も離婚もひとつの線上にあり、特に離婚は、「行きつく先として当たり前」といった感覚を多くのオランダ人たちが持っている。結婚生活を長続きさせるため、なるべくお互いで努力し合う、というような考え方は論外なのかもしれない。避けがたい問題が生じれば離婚してお互い自由になり、1度しかない人生を楽しく過ごしたほうがいい、といったところなのだろう。

Text by カオル イナバ