年間1000億食、世界を制したインスタントラーメン 欧米では貧乏学生のイメージ?

 戦後、日本で誕生したインスタントラーメン。いまや海を渡って世界各地の生活文化に適応し、さまざまな味付けや調理法で食されている。安くておいしいと庶民に人気で、「嗜好性の地域差を乗り越えた唯一のインスタント食品」と評されている。

◆世界に受け入れられた日本の大発明
 米公共ラジオネットワークの『NPR』のニュースサイトは、世界を制した飲食物はと尋ねれば、おそらくコカコーラやビッグマックの名前が上がるだろう、と2013年に指摘した。2年後の今、コーラの消費量は減少し、マクドナルドも苦戦中。一方世界では、年間約1000億食のインスタントラーメンが消費されており、2020年までには全世界での消費量が、1458億食に到達すると予測されている(英ガーディアン紙、豪フード・マガジン誌)。

 インスタントラーメンは、家庭で手軽に食べられるラーメンを作ろうと考えた日清食品の創業者、安藤百福氏によって、1958年に開発された。1980年代から、世界各地で製造されるようになり、フード・マガジン誌は、「嗜好性の地域的違いを越えた唯一のインスタント食品であり、極めて重要な、世界の人々の日々の食事に欠かせない一部」になったとインスタントラーメンを評し、特にアジア市場での成長が著しいと述べている。

 インスタントラーメンを分析した本『The Noodle Narratives(麺の物語)』によれば、タイではレモングラス&パクチー味、メキシコではエビ、ライム&ハバネロといった地元フレーバーが味わえ、新し物好きの日本では、年間600種類の新製品が登場しているという(NPR)。

◆「安くて早い」に、一工夫
 世界の味となったインスタントラーメンだが、西洋ではネガティブなイメージが強い。アメリカでは、貧乏学生など、金のない者の食べ物というイメージが定着。ちなみにオハイオ州のある刑務所では、1個50セント(約60円)のマルちゃん・ラーメンが2014年の囚人に人気の買い物ランキングで菓子パン、ピーナッツバター・クッキーに次いで3位につけた(Cleveland.com)。オーストラリアでは、「食べ物に多くを望まない学生の、生きるためだけの軽食」と思われているらしい(ガーディアン紙)。

 ウェブ誌『Bustle』のライター、サディ・トロンベッタ氏も、学生時代インスタントラーメンにお世話になった1人で、今も自宅の棚に買い置きしているという。同氏は、安くて早いだけがとりえと思われがちなインスタントラーメンを、おなかも気持ちも満たす料理に変える方法を紹介。「ピーナッツバターをトッピング」、「チーズを投入」、「そのまま、または調理後サラダにミックス」、「オムレツの具にして、ラーメン・ブレックファスト」、「タコスに詰める」など、日本人にはかなり驚きのアイデアを披露している。

 1600種以上のインスタントラーメンを食べ尽し、ラーメンブログ『Ramen Rater』 を書くハンス・リーネッシュ氏も、インスタントラーメンは「そのまま食べるもの」というのは、よくある間違いだと指摘。麺は基本的にベースであり、ソースや肉、野菜を加えることで全く違った食べ物に仕上がると説いている(ガーディアン紙)。

Text by 山川 真智子