同盟国日本へのスパイ活動、“意外ではない”と米メディア TPP、安保法案に影響か

 ウィキリークスは7月31日、米国家安全保障局(NSA)が日本の中央省庁や日本銀行、民間企業などを対象に電話の盗聴を行っていたとして、対象35ヶ所のリストを公表した。また傍受内容の報告書5点を公開した。うち4点は最高機密に指定されていた。それによると、農産物の輸入や気候変動などの問題で、米側に対してどのような姿勢を取るべきか、国内で進められていた検討内容が、米側に筒抜けだったようだ。一部海外メディアは、この問題の露見により、現在国会で進められている安保法制への反対の声が高まる可能性に注目している。

◆同盟国日本へのスパイ活動も「意外ではない」
 ウィキリークスによると、NSAは遅くとも第1次安倍内閣(2006年9月発足)の頃から、日本政府などを対象に電話の盗聴を行っていたという。対象には、内閣府、財務省、経済産業相、日本銀行、三菱商事の天然ガス部門、三井物産の石油部門などが含まれていたとされる。この問題に関して、菅義偉官房長官は3日の記者会見で「仮に事実であれば同盟国として極めて遺憾だ」と述べた。

 公開された報告書は、主に通商問題と気候変動対策に関するものだ。多数の日本の閣僚、省庁から情報が収集され、調査分析されていることを報告書は示しており、日本政府へのスパイ活動の深刻さを証明するものだ、とウィキリークスは語っている。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)によると、米側は、日米間で意見の対立があり得る国際会議やフォーラムなどへの日本側の準備をひそかに監視するために、日本政府および企業へのスパイ活動を行っていたようだという。

 情報が米側に筒抜けだった上、ウィキリークスによると、米国はさらに、一部の情報に関しては、オーストラリア、カナダ、イギリス、ニュージーランドへの公開を正式に認可していた。米国はこれらの国とは「ファイブ・アイズ」として、情報活動で緊密な連携を行っている。一方で、米国は、同盟国であるドイツやフランスなどへのスパイ活動を行っていた。ウィキリークスは過去にそのことを暴露している、とAFPは伝える。米外交専門誌フォーリン・ポリシーのニュースブログ「ザ・ケーブル」は、米国が長年の同盟国の日本に対してスパイ活動を行っていたことが暴露されたが、これはまったく意外ではない、と語っている。

 ウィキリークスの創始者で編集主幹のジュリアン・アサンジ氏は、日本への忠言として、「スパイ活動の世界的超大国の振る舞いに、信義や配慮を期待してはいけない。ルールはたった一つしかない、ルールなどないというルールだ」と語っている。

◆スパイ活動は今でも続いているのだろうか
 ザ・ケーブルは公開された報告書について、日本が米側の反応を心配しながら、どのような態度を取るべきか検討していた内容が、米側に筒抜けだったことに注目している。

 AFPは、貿易担当当局者へのスパイ行為が行われていたとの主張は、TPPの閣僚会合がハワイで行われた後で、とりわけデリケートな問題になりかねない、と語る。日米は、自動車や農産物の市場開放をめぐって対立してきたことを伝える。明言しているわけではないが、TPP交渉に関しても、同様にスパイ行為が行われていた可能性があるのではないか、という疑いを強く暗示している。

 ザ・ケーブルは、何千億ドルもが貿易協定にかかってくる可能性のある国際貿易、輸出入規制、気候変動問題の条約に関しては、近年、世界中の国々が、友邦、および大して友邦でない国の立場を正確に知ることを求めている、と背景を説明している。

◆米側の真意はいつも信用できるとは限らない、との批判が
 FTとAFPは、今回のリークによって、現在国会で審議中の安保法案への反対運動が高まる可能性に着目している。

 FTによると、安倍首相が安保法制で国民からの大反対に直面しているというときに公表され、最悪のタイミングだとある政府筋が語ったという。安保法案に対して繰り返し起こる批判の一つは、日本政府は米政府にあまりにも歩調を合わせ過ぎで、米国の真意はいつも信用できるとは限らない、というものだと同紙は語る。

 AFPも同様に、今回のリークは、自衛隊の役割を拡大する措置を講じているときに起こった、と語る。米政府はこの措置を称賛しているが、国内では非常に不人気だ、としている。今回のリークによって、安保法制と、TPP推進の安倍首相の試みに警戒している国民から、強い反発が引き起こされるかもしれない、と語っている。

「一部の圧力団体と野党は、このニュースを政府の計画の実施を妨げるために使用するだろうと思います」とフランス国際関係研究所の日本専門家Celine Pajon氏はAFPに語っている。AFPは安保法案について、大戦後初めて、自衛隊の部隊が海外で同盟国、主としてアメリカを防衛するために戦うことになるかもしれない異論のある法案だと説明する。法案の反対者は、平和主義の日本を海外の戦争に引きずり込むものだと主張している、と伝える。

Text by 田所秀徳