中国「GDP7%増」に疑問の声も… 米メディアは危機論展開“次の日本になるか?”

 15日に発表された中国の4~6月期のGDPは7%増と、予測を上回る結果となった。しかし、この日の上海市場は大幅続落。今や政府発表のGDPに疑念を持つ専門家も多く、中国経済の低迷は、鮮明になっている。

◆このままでは日本の二の舞?
 ブルームバーグは、リサーチ会社のオックスフォード・エコノミクスらによる、二つの研究に言及。どちらも現在の中国と1990年の日本の類似性を指摘しているとする。日本は1980年代から1990年のバブル崩壊まで、急速な成長を遂げた。そして中国も、ここ数十年は借金に依存し急成長。不動産価格は上昇し、株式市場はこの1年間、反騰している(ブルームバーグ1)。

 日本の場合、バブル崩壊後どれほど成長力が落ちたか、またどれほど長くその影響が続くのかを認識するのに、相当な時間がかかった、とオックスフォード・エコノミクスは分析。その結果日本では、高齢化などの要素は無視し、楽観的な成長予測が、バブル崩壊後も続いていたと述べる。(ブルームバーグ1)。

 中国は中期的な経済予測を引き下げてはいるが、それでもまだ楽観的と考えられている。オックスフォード・エコノミクスの研究を指揮した経済学者のアダム・スレーター氏は、「慢性的な過剰投資、民間部門の負債の多さ、薄っぺらな資産市場、問題を抱える人口統計」など、かつて日本が経験した憂慮すべき兆候が出ていると指摘。まだ伸びしろがあり、政府に対策を打つ十分な余裕がある今の中国と、1990年の日本では事情が違うとしながらも、中国ウォッチャーや投資家は、これを警告ととらえるべきだと述べている。

◆共産党システムの限界か?
「中国の政治システムは、1978年以降の最初の経済改革の波において偉大な進行役であった」というのは、ジョージ・ワシントン大学教授でベテラン中国ウォッチャーのデビッド・シャンボー氏だ。しかし今やそれが、改革と成長にとって「最大の障害」になっている、と同氏は述べる(ブルームバーグ2)。

 経済統制の仕組みが中央に集中したトップダウン式のリーダーシップは、初期の段階ではうまく機能した。しかし、ひとつの部門の問題があっという間に形を変え、意図せぬ結果を別の場所で生み出してしまう、巨大で多面的な経済を運営するには、この仕組みが以前ほど有利ではないだろうとブルームバーグは指摘する。

 ブルームバーグは、1980年代から1990年代にかけて中国の指導者たちがしたように、途上国経済の運営は、国家主導の貸付けや、安価な労働力、豊富な海外からの投資に頼ることでうまくいったが、金融システムを近代化し、リバランスにより消費主導の成長に導き、不動産市場、企業、地方政府の負債爆発の危険を取り除くことを同時に行うという難しい作業は別物だ、とする。そして、これらがまさに中国政府の手元の課題だとし、そのかじ取りが一筋縄ではいかないことを示唆している。

◆信頼できない数字
 さて、7%という中国の4-6月期のGDPの成長率に、各所から疑問の声が挙がっている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、ゴールドマン・サックス、野村ホールディングスなど、いくつかの金融組織は、実際の成長は公式発表より2~3%低いと推定。また、シティ・バンクも、「政府は景気減速を認めるべき」とし、実際の成長率は5%としている。国家統計局は、データに水増しはなく、「客観的に状況を示したもの」としているが、一部のエコノミストたちは、中国の統計への信頼性に再度疑問符がついたと述べている(WSJ)。

 ロイターに意見を寄せた、ジャーナリスト、アンディ・ムカルジー氏も、7%には懐疑的だ。「最新のGDPレポートが偽の安定感を伝えているとしても、なにも手を打たないという選択肢はない」と述べ、成長は安定化し、「回復の準備ができた」と述べる統計局を皮肉っている。

Text by 山川 真智子