エジプト、フランス戦闘機を初購入 米国の思惑通りの展開か? 背景を海外識者分析

 エジプトは16日、フランスのダッソー・アビエション社の戦闘機「ラファール」24機の購入を決めた。「ラファール」は15年前からフランス空軍で使用されているが、正式な輸出は初となる。なぜ、エジプトは購入に踏み切ったのか。

◆ 背景には、リビアとシナイ半島の政情不安
 エジプト政府は、「ラファール」24機、フリゲート艦1隻とその他軍事備品を57億ドル(約6,720億円)で購入する(デイリーニューズ・エジプト紙)。この資金は、サウジアラビアと周辺の湾岸諸国が融資することになっているという。

 世界の主要各紙は、シナイ半島や隣国リビアでのジハード主義者による政情不安から、国内防衛強化のための購入であると報じた。また、スエズ運河の拡張工事完成にも間に合せたい意向、とも一部メディアは言及した。確かにエジプト政府の購入決定は、他国に比して早かったといえる。例えばインドは、2012年にラファールの購入を決めたが、まだ最終的な契約には至っていない。

 ただ、エジプトの軍事専門家のロバート・スプリングボーグ氏は、エジプトの問題は戦闘機が不足しているのではなく、パイロットの訓練が不十分なことだ、と述べている。

◆ エジプトの「ラファール」の購入を米国が勧めた
 また、米国の中東戦略の変化をあげる専門家もいる。世界情勢分析で著名なフランスのティエリー・メイサン氏は、以下のように解説している。

 米国は、イスラエルとパレスチナの政情安定のため、ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦を主要メンバーとした「軍事協定」創設を決めているという。これは、米軍が将来極東へ重心を移した際の空白を補うためでもある。エジプトは「軍事協定」への加盟に前向きだが、米国は同国の参加を望んでいない。

 しかし米国は、中東におけるエジプトの政権安定・国防強化は必須とみている。だからこそ、米国はサウジアラビアとアラブ首長国連邦に対し、資金難のエジプトへ、戦闘機購入資金を融資するよう後押しした。両国はエジプトがムスリム同胞団を追放したことに強く感謝しており、エジプトの政権安定が中東の政情安定に必須だと理解している。また米国は、エジプトとシリアとの関係回復も危惧している。資金提供する両国はシリアと対立関係にあるので、エジプトはシリアへの接近を控えるはず、との思惑もある。

 さらに、米国はエジプトとの関係が冷えこんでおり、直接戦闘機を輸出できない。しかし、世界の戦闘機の中で、米国のパーツを使用せず、しかもNATOメンバー国が生産する高性能な戦闘機は、フランスの「ラファール」だけだった。米国はこれまで、「ラファール」に関心を示した国には、あらゆる手を尽くして購入を妨害してきた。しかし今回は、上述の理由から、例外的な対応をとった(以上、仏ボルタイレネット情報紙)。

Text by NewSphere 編集部