日本も学べる? トルコのしたたかな外交:中国製ミサイル防衛システム導入検討でNATO加盟国に圧力

エルドアン大統領

 NATOで問題が起きている。NATO加盟国のトルコが、中国の地対空ミサイルシステムHQ-9を購入する意思を表明しているからだ。ユルマズ国防相の議会への答弁書によると、「計画中の長距離弾道ミサイル防衛システムは、現在運用中のNATO防空システムとは連接せず、トルコ独自の防衛システムを構築」する予定だ(トルコのヒュエット紙)。

 トルコのねらいや欧米の反応について海外メディアが報じている。

◆トルコ、中国企業と契約し独自システム構築図る?
 発端は2013年9月、トルコの長距離ミサイル防衛システムについて、中国のミサイルメーカーCPMIEC社が、34億4000万ドル(4,060億円)で落札したことだ。米ロッキード・マーティン社、仏伊合弁ユーロサム社からの提示額は40億ドル(4,720億円)以上だったという。価格面以外に、製品の一部を共同生産することに中国側が同意しているからだとも報じられている(スペインのエル・パイス紙)。

 欧米は懸念し、トルコに圧力をかけているようだ(ディプロマット誌)。中国国営紙はこれを非難したという。ロシアのスプートニック・ムンド紙は、トルコはNATOの圧力に屈せずにいると報じた。また同紙は、トルコが2012年、米国、オランダ、ドイツからパトリオットミサイルを2台ずつ供給してもらったことにもふれている。こうした支援を受けながら、中国製のミサイルシステムを購入しようとするトルコの姿勢に、米国は納得できないだろうとも報じた。CPMIECはハイテクノロジーの兵器をイランに、そして化学兵器をシリアにそれぞれ販売したとして、米国が制裁を加えている企業であることはエル・パイス紙やロイター通信などでも報じているが、

 NATOのアナリストは、中国製システムがNATOのシステムとの互換性に欠けていることを指摘した。同様に、中国のミサイルシステムに、パトリオットのバッテリーの組み合わせもできない。NATO加盟国外交筋は、敵を自分の家に招待するようなものだ、と皮肉った(以上、スペインのエル・パイス紙)。

◆ トルコ、実は欧米2社への値下げ圧力?
 しかし、トルコの本当の狙いは、上述の欧米2社に、価格の再検討を促すためではないか。トルコのメディアが、政府筋から掴んだ情報として報じている。

 政府は4月24日まで決定は下さないとしている。この日は、オスマン帝国(トルコの母体)が第1次世界大戦中、少数派アルメニア人をシリアに強制移住させ、虐殺したことを追悼する日だ。150万人が犠牲者になったとも言われる。米国とフランスでは、アルメニア人のロビイストが上述2社に影響力をもっているとされる(スペインのエル・パイス紙)。

 また米国の国家防衛管理局では、米国の資金が中国の防衛システム導入のための費用としてNATOで使用されることが禁止されていることも明白にしている。

◆トルコに不足しているのは地対空防衛システム
 トルコはこれまで米国製の兵器に依存してきた。またトルコは、軍事力の規模ではNATOで2番目に位置する国である。あるアナリストによると、トルコの軍事力で唯一不足しているのが地対空の防衛なのだという。

 この中国製ミサイルの設置は、ロシアに対する核抑止力としては不足である。しかし、周辺地域における防衛システムのバランスを崩すことにはなるという(以上、ロシアのスプートニック・ムンド紙)。

Text by NewSphere 編集部