日本などの大使館が閉鎖へ…イエメン内戦の危機に世界が注目:石油輸出にも悪影響?

 外務省は15日、セキュリティ上の理由から、在イエメン日本大使館を一時閉鎖した。同じような動きは、欧米各国ばかりでなく、UAEやサウジアラビアの大使館でも起きている。イエメンでは、イスラム教シーア派系の武装勢力「フーシ」が首都サヌアを制圧し、治安が悪化しているためだ。

◆欧米・アラブ諸国の大使館も閉鎖
 イランの国営放送局Press TVは、15日の日本大使館の一時閉鎖措置を伝えるとともに、その他の国々の大使館の動きも伝えている。

 それによると、11日にフランスの大使館が13日からの閉鎖を発表。イギリスの大使らはサヌアから退避し、アメリカ大使館も閉鎖された。13日には、イタリアが大使館員らの帰国を発表し、ドイツの外交関係者もイエメンを出国した。サウジアラビアも外交活動を中断、大使館職員らに帰国を促した。またUAEとスペインも大使館閉鎖を発表している。

◆シーア派武装勢力「フーシ」の台頭
 BBCが伝えるところによれば、イスラム教シーア派の武装勢力「フーシ」は、イエメン北部を本拠地としており、昨年9月に首都のサヌアに侵攻。さらに中部や西部で、地元の部族や「アラビア半島のアルカイダ」らと衝突を起こしながらも、スンニ派地域へと支配地域を拡大させている。

 イエメンでは、2011年に起きた大規模なデモにより、長期に渡って在位していたサーレハ大統領が辞任。ハディ氏が大統領職を引き継ぎ、国連支援下で民主化への移行が行われていた。

 しかし、フーシは今年の2月6日に議会を解散させており、2年間の移行期間を設けて、その間の統治を行う「presidential council(大統領評議会)」を形成するとの計画を発表したとのことだ。

 それを受けて、国連は全会一致で決議を採択。その内容は、国連仲介の和解交渉への参加と、自宅に軟禁されているハディ大統領、首相やその他の閣僚の解放を求めた。しかしフーシ側は、国連の撤退要求を拒否するなど、対決姿勢を強めている。

 イエメン国内でも、フーシに反対する勢力が衝突を起こしている。イエメン第2の都市アデンでは、ハディ元大統領の親派Popular Resistance Committeesが、政府関連施設を攻撃。情報部本部と放送局を占拠した、とBBCは伝えている。

◆石油輸出への悪影響も懸念
 フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は、イエメンの政情不安定が招く地政学上の脅威を指摘。

 フーシの台頭は、アラビア半島のアルカイダを勢いづかせてしまうばかりではなく、ソマリアに面して位置するバブ・エル・マンデブ海峡の安定をも脅かす可能性があると、FT紙は指摘。バブ・エル・マンデブ海峡は、紅海とアラビア海を結ぶ海峡で、1日に400万バレルの石油が、この海峡を通って運ばれている。

 「(イエメンに)内戦が起きれば、ソマリアのような国家機能を失った新たな国を意味し、バブ・エル・マンデブ海峡の閉鎖の可能性もあるのです」と、ブルッキングス研究所ドーハセンターのIbrahim Sharqieh氏(紛争解決アナリスト)と語ったという(FT紙)。

 パン・ギムン国連事務総長は、安全保障理事会で「イエメンが私たちの目の前で崩壊している」と述べ、イエメンは内戦状態に突入しようとしている、とみている。

Text by NewSphere 編集部