今こそ知っておきたい ヨルダンとはどんな国か 中東の要、国王の政治手腕、日本との友好…

 邦人人質事件で日本の対策本部が行われたことなどから、ヨルダンへの注目は高まっている。対ISIL、中東での立ち位置、日本との関係という3点について、海外報道などをもとに、どのような国かを探る。

◆ヨルダン王国基礎知識:国王の政治手腕に高い評価
 ヨルダン王国は、1946年に独立した。国土は日本の約4分の1で、西はイスラエルとパレスチナ、北はシリア、東はイラク、南はサウジアラビアと国境を接する。人口は645.9万人で、イスラム教徒が90%以上を占める。うち200万人はパレスチナ移民であるという。

 ヨルダンは産油国ではなく、経済基盤は弱い。非公式の失業率は30%とされる(公式では11%)。止まらない難民の流入が、大きな問題となっている。シリアからの難民は150万人で、難民救済資金だけでも9億ドル(1,062億円)が必要という。

 1999年に即位した国王アブドラ2世(53)は、イスラム教の預言者ムハンマドも属していたハーシム家の43代目にあたる。穏健派として知られる国王は、2012年の反政府運動「ヨルダンの春」を巧みに収拾したという(仏のボルタイレネット情報紙)。欧米でも、実直な人物として高く評価されているようだ。仲介者としても活躍しており、イスラエル・パレスチナ双方から厚い信頼を得ているという。

◆ 中東におけるヨルダンの重み
 では、ヨルダンは中東でどのような立ち位置なのか。同国は紛争地域に位置しているからこそ、周囲に上手く同化して、自国の存続を確保せねばならない運命にある。煙吹く火山の噴火口に座っているようなものだ、とイスラエルのハーレツ紙が報じたこともある。ペンタゴンの元高官デイビッド・シェンカー氏は、ヨルダンが瓦解すれば中東の安定は壊滅する、と述べたという(メキシコのインフォルマドール紙)。

 同国は1994年、イスラエルと和平協定を結んだ。アラブ諸国においては珍しい。イスラエル安全保障議会の元アドバイザー、ヤコフ・アミドゥロー氏は、もしヨルダンが国境で紛争に巻き込まれ支援が必要なら、イスラエルは直ちに救援に向かう、と述べたという。ヨルダンとシリアとの国境は、イスラエルのドローンが上空から監視している。

◆ISILに空爆
 次に、過激派組織「ISIL」への姿勢はどうか。もともとヨルダンは米国とサウジアラビアとの関係が強く、有志連合に加わり空爆に参加していた。さらに、ISILがヨルダン空軍のパイロットを焼殺したとみられる残虐な映像を公開したことで、報復としてより徹底的な空爆を5日から3日間行った。補給基地や潜伏先など、重要目標56ヶ所を破壊したと発表している。マンスール・アルジョブル空軍司令官は、ISILを「地球上から一掃する」と、さらなる攻撃への決意を強調した。

 過激派への報復で、ヨルダン国民は湧いている。国王が訪米を途中で切り上げて帰国した際には、多くの国民が空港で出迎えたという。

 また6日には、イスラム法学者アブ・ムハンマンド・マクディーシ師を釈放した。同師はアルカイダに影響力をもっている人物で、今回のパイロットの焼雑を残虐行為だと非難している。彼を通して国内のアルカイダの活動を鎮静化させる狙いがあるようだ(サウジアラビアのアル・アラビア紙)。

 米国は、ヨルダンへの年間支援金を、6億6000万ドル(790億円)から10億ドル(1180億円)に増やすことを今月決めている。ISILによるヨルダン攻撃への懸念の声も報じられている中での増額となった。

◆日本との関係は良好
 最後に、日本との関係は長年にわたり良好だ。アブドラ国王は計11回来日している。

 昨年11月の来日時には、日本の難民支援や潅漑設備の整備・発展などに感謝を表明した。さらに安倍首相とともに、ISILを「国際秩序に対する重大な脅威」とし、「国際社会による共同の努力の必要性」を確認していた(外務省)。国王は日本の人道支援を含むテロとの闘いを高く評価していた。このニュースは『ヨルダン・タイムズ』などでも報じられた。

Text by NewSphere 編集部