ロシアがギリシャの救世主に? 新政権への接近に欧州紙注目、チプラス首相は否定

 反緊縮財政を掲げるギリシャ新政権の行方が注目されている。2月末までに支援元のトロイカ(EU、ECB、IMF)と合意に至らない場合、追加支援金を受けられず、ギリシャはデフォルトを余儀なくさせられる。既に現在の負債は、トロイカの支援金2400億ユーロも含め、3170億ユーロ(GDPの175%)に及ぶ(スペインのエル・パイス紙/abc紙)。

◆あくまで債務減免を求める姿勢
 チプラス新首相は29日、アテネでシュルツ欧州議会議長と会談し、債務減免と経済成長に準じての返済猶予を希望していると伝えた。翌日には、バルファキス財務相が、ユーロ圏財務相会合のディセルブルム議長と会談。バルファキス氏は記者会見で、トロイカとの今後の交渉を拒否し、前政権が合意していた返済条件を否定した。対して議長は、ギリシャが約束した返済条件を満たす場合に限り今後も支援を続ける、とけん制した。

 2日には、チプラス首相は「トロイカ」解体にふれ、交渉の新たな枠組み作りに意欲を示した。対して、EU委員会ではトロイカ体制を廃止し、支払猶予期間延長と金利の引下げを検討しているようだ(スペインのエル・パイス紙)。ドイツ政府はトロイカの機能の変更は考えているようだが、トロイカを全廃することには反対しているという。

◆ ロシアがギリシャを支援する用意あり?
 こうした中、ロシアがギリシャ救済に踏み出すのでは、という報道が複数見られた。ただ、チプラス首相は2日、ロシアへの支援要請を検討していないことを明らかにし、ユーロ圏離脱の可能性を否定した。

 米経済学者のポール•クレイグ•ロバーツ氏は、キング・ワールド・ニューズのインタビューで、「ドイツを始め債権国がギリシャの要望に応える用意がない場合は、ギリシャとロシアが強く結びつくのを目の当たりにするようになる」と述べた。ロシアのシルアノフ財務相は、ギリシャから融資の依頼を受けたら実行に移す用意がある、とCNBCで答えた。

またロバーツ氏は、プーチン大統領はギリシャをEU・NATOから切り離すことに強い関心があるとして、分裂の始まりになる、と警告している。マンチェスター大学のディミトゥリス・パパディミトゥリウス教授は、与党の急進左派連合(SYRIZA)はプーチン大統領と深く協力関係にある、と答えている(CNN Money)。

 チプラス首相は慣例を破り、ロシア大使の訪問を最初に受けた。さらに両国は、2016年をギリシャでは“Year of Russia”、ロシアでは“Year of Greece”とすることに合意している (スペインのエル・コンフィデンシアル紙)。カメノス国防相や、共産党出身のコズィアス外相も、個人レベルでロシアと親密な関係をもっている。EU外相会議でロシアへの新たな制裁を議論している時に、カメノス国防相はロシアからの武器の購入を決めていた(スペインのエル・パイス紙)。

◆ ギリシャ首相と財務相は債権国を個々に説得に  他国は不満も
 バルファキス財務相はパリ、ロンドン、ブルッセルと訪問を続け、チプラス首相はキプロス、フランス、イタリアを訪問してトップ会談を行い、個々に債権国を説得して行く構えだ(スペインのエル・パイス紙他)。

 しかし、金融支援の代償に緊縮財政をしいてきたポルトガルとスペインは、ギリシャの非協力的姿勢に強い不満を表した。し両国とも苦しい財政事情の中、ポルトガルは11億ユーロ、スペインは260億ユーロをギリシャへ融資しているからだ。他にはドイツ、オランダ、フィンランド、オーストリアが強硬グループとされている (以上、スペインのエル・パイス紙)。

Text by NewSphere 編集部