ロシアとイランが軍事協力へ…米国をけん制? イスラエルも警戒

 ロシアのショイグ国防相は20日、イランを訪問し、デフガーン国防軍需相との会談で、防衛強化の合意を交した。その背景と今後の影響を、両国メディアなどの報道から探る。

◆ 地対空ミサイルシステムS-300にまつわる経緯
 合意の中には、懸案だったロシア地対空ミサイルS-300のイランへの供給も含まれている、とテヘラン・タイムズ紙やイラン国営TVは報じた。

 イランは、ロシア製Tor M1ミサイルシステムを備えているが、性能の高いS-300を2007年に8億ドルで発注した。しかし、対イラン制裁で、第3国からハイテク武器などの供給は禁止されている。米国とイスラエルもミサイル輸出に強く反対し、ロシアに圧力をかけた。そのため、メドベージェフ大統領(当時)は、納品を中止した。それに対してイランは、契約違反だとしてロシアの武器輸出企業を国際仲介裁判所に訴え、損害賠償40億ドルを請求していた(ロシアのRBTH紙)。

 ただし、イスラエルの代表紙『ハアレツ』では、S-300のイランへの納品について、ショイグ国防相は言及を避けていると報じている。また同紙はロシアがイランの原子力発電所建設に協力していることにふれ、両国の関係の深さを示唆している。

◆米国を牽制の意図も
 両国の合意には、国際平和の維持に努め、情報交換を行うことなども含まれている。特に、米国の他国への干渉にも双方で見解を確認する、としている。また軍事演習の実現も視野に入れているようだ(テヘラン・タイムズ紙)。

 ロシアはイランに対し、アフガニスタンでの麻薬取締協力も要請した。さらに上海協力機構へのイランへの関与強化も説いたようだ(ロシアのRBTH紙)。

 イランのロウハニ大統領は昨年2月、イランとロシアの新しい関係を築く旨を語っていた(中東のアルモニター紙)。ショイグ国防相のイラン訪問の前には、ノバック・エネルギー相も同国を訪問し、石油開発にロシア企業が参加するための協力が確認された(テヘラン・タイムズ紙)。

 イランからのロシアへの食品の供給も10-15%伸びたという(ロシアのイタルタス通信)。

Text by NewSphere 編集部