尖閣注力で北方が手薄? ロシア機へのスクランブル発進が急増 日本のジレンマを海外指摘

 防衛省の発表では、航空自衛隊がスクランブル発進を行った回数が、2014年4月からの第1〜3四半期の9ヶ月で744回だった。これは、1984年の冷戦真っ只中に記録した過去最高の944回を上回る勢いだ。

 日本は、中国が領有権を主張している尖閣諸島の防衛を向上させるために、航空自衛隊の再配置を進めている。海外メディアは、手薄になった北部へのロシア機の接近を招いているとして、南北2面での対処を迫られている日本政府のジレンマを指摘している。

◆中国との尖閣諸島問題により増加
 英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は、回数が増えているのは、東アジアでの軍事的な緊張が高まっていることを浮き彫りにしていると指摘。

 実際、1980年代には年に900回以上ものスクランブル発進を行っていたものの、冷戦の終結とともに150回ほどに減少していた。しかしながら2000年代中頃から、中国が軍事力を誇示するようになり増え始めた、とFT紙は伝える。

 また、尖閣諸島が大きな要因となっていることも指摘。2012年に日本政府が尖閣諸島の3島を所有者から購入したことで、中国は対抗措置として翌年に尖閣諸島の上空を含めて防空識別圏とした。中国機は尖閣諸島付近の東シナ海から太平洋に抜けるルートを取っているため、自衛隊によるスクランブル発進となっているとしている。

 2014年の第1〜3四半期の9ヶ月でのスクランブル発進744回のうち、ほぼ半数の371回が中国機に対するもので、前年同期比て29%の増加だ。

◆手薄となった北海道にロシア機が接近
 ロイターと外交ニュースサイト『ディプロマット』は、尖閣諸島問題で北部が手薄になったところに接近するロシア機の問題に注目している。

 ロシア機へのスクランブル発進は、過去9ヶ月で369回となっており、前年より50%の増加となっている。これは、ロシアと日本との間に北方領土問題が横たわっているが、日本が尖閣諸島を喫緊のものと見ているため、北海道が手薄になっているためとロイターが指摘している。

 ディプロマットは、ロシア機の予想外の増加により、日本は2方面からの圧力に挟まれる形となり、政府はジレンマを抱えることになったと指摘。南北に長い日本で、北のロシアと南の中国に対処しなければならない、日本の防衛面での難しさを指摘している。

◆日本は防衛力強化のため、装備を最新化
 日本は防衛力強化のために、小型船や潜水艦を探知する海洋哨戒機、駆逐艦、潜水艦やF-35戦闘機購入のために予算を計上したことをFT紙が伝え、ロイターも日本がボーイング社のオスプレイやBAEシステムズの水陸両用強襲車両などの装備を購入予定であることを伝えている。

 一方で、GDPの2%を軍事費としている中国と比べて、GDP総額もはるかに小さい上に1%しか日本は費やしていない、とFT紙は伝えている。

Text by NewSphere 編集部