ロシア国民64%が核戦争を懸念 ロシアへの恐怖が第3次大戦に引き金になるとの指摘も

プーチン大統領

 3月のクリミア併合を機に、欧米とロシアの対立が明確となった。国民の間でも不信感が広がっているようだ。

◆ロシア国民の64%は核戦争を懸念
 ロシア世論調査協会が実施した調査(6月)では、64%の国民が核戦争の可能性を懸念していた。そのうち52%が核戦争の相手は米国としており、12%は北朝鮮、9%はパキスタンだった。また76%が、世界から核兵器を廃止する為に闘うべきだ、と答えた。その必要はないと答えたのは14%。ただし、この先核兵器が廃絶されると考えている者は19%だった。

 ロシア連邦議会のコモイェドフ防衛委員長は、誰もが恐怖をもっているのは米国のせいだ、としている。同国政治学協会のドブロメロフ氏は、ロシア人の間で広く流布された核戦争への恐怖は、メディアの報道演出に影響されている、とも指摘している(ロシアのRBTH)。

 一方、核戦争の可能性について、米識者は否定的だ。レーガン政権で財務次官を務めたポール・クレイグ・ロバーツ氏は12月、キング・ワールド・ニューズのインタビューでこう答えた。もしNATOがロシアを核先制攻撃しても、核報復攻撃を阻止できるだけの能力はない、というのだ。

◆バルト三国とポーランドのロシア脅威
 米CNNの世論調査によると、「ロシアを脅威に感じる」と答えた人が、この2年間で急激に増えているという。また、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)やポーランドのロシアへの懸念も大きい。

 バルト三国はソ連解体後の1991年に独立し、2004年にNATOに加盟した。ロシアのクリミア併合を受け、軍備強化を急いでいる。ポーランドは、バルト海でのロシア艦隊の通過、領空へのロシア軍機の侵入増加に強い不安を抱いている。これらの国は、万が一ロシアと戦争になれば勝ち目はない。それでも、NATOからの支援を待つためにも、持ちこたえるだけの軍事力を強化しようとしている(以上、スペインのエル・ファロ紙)。

 リトアニアの東欧研究センターのアナリストは、ロシア政府内の過激派が、ウクライナ東部への攻撃を主導しているとみる。彼らは、NATOがバルト三国を守る軍事行動に出るとは思っていない、とも指摘。さらに、NATOにとって、バルト三国は危険を冒してまで守る価値はないのでは、と危機感をあらわにした(スペインのエル・コンフィデンシアル紙)。

◆ロシア側の反応
 ロシアのシンクタンク「協力と民主の協会」のミグラニャン所長は、バルト三国の問題は政治的なものではなく、精神的なものである、と指摘している。同国らは、ロシアに関することでパニックになってしまい、安心できないのだろう、というのだ。同氏は、現在のロシアは過去のロシアと全く異なっている、と述べた(スペインのエル・コンフィデンシアル)。

 また、プーチン大統領のアドバイザーのひとり、セルゲイ・マルコフ氏は6月、あるスウェーデン紙のインタビューで下記のように述べた。第2次世界大戦はユダヤ人排斥が要因となったが、ロシアへの恐怖が第3次世界大戦の引金になりうる、と。

 一方で、過激な言動を隠さないロシア国粋主義者もいる。ユリノースキー氏は8月のRussia-24チャンネルのインタビューで、「バルト三国とポーランドの国土は蹂躙され、何も跡形はなくなる」と答えて、番組の司会者さえも呆然とさせてしまった。

Text by NewSphere 編集部