“裸で入浴”日本式温泉、豪州で人気? 水着なしで“想像以上の開放感!”との声も

オーストラリアの銭湯

 SUSHI(寿司)やRAMEN(ラーメン)などの日本を代表する食が世界に進出、ローカライズを含み各国に定着して久しい。もはや当初のエキゾチックさより、味そのもので勝負する段階に突入している。そして今、オーストラリアでは、いわゆるスパではなく日本の温泉、銭湯インスパイアのONSEN(あるいはSENTOU)がじわじわと評判になりつつある。

◆温泉テーマパークのような娯楽施設を
 海外の温浴施設であるスパと日本の銭湯や温泉の決定的な違いは、入湯時に水着をつけるか、裸であるかである。だが日本でも温泉地などにある温泉テーマパークは水着着用のところもある。メルボルン郊外にある「ペニンシュラ温泉」は、言うなればオーストラリア版温泉テーマパークだ。

 沿革によると創設者の1人が1990年代始めに日本に滞在していた時に「温泉文化にはまり、いくつもの有名な温泉を訪ねインスパイアされた」ことが始まり。「自国のオーストラリアで可能な限り再現しようと、掘り当てた天然温泉」である。打たせ湯、岩風呂、足湯、ジェットバスなど私たちにはおなじみの風呂と温泉のロゴマークに、熱意が現れている。ちなみに現在は露天を含む20もの風呂を有する。

 南国オーストラリアでも南に位置するメルボルンの冬は寒い。ヘラルドサン紙に掲載された「こんな寒い時は温泉に入って温まるのは最高だよね」とのインタビュー時のコメントからわかるように、癒しやリラックスだけではなく「温まりたい」という言葉こそがまさに日本の冬を思わせる。

◆裸で体を洗って湯船に入る気持ちよさを伝える銭湯
 先ほども述べたようにオーストラリアももちろんスパやプールなどでは原則的に水着着用である。だがメルボルンのど真ん中にある2軒の銭湯「Onsen Ma 間」と「お風呂屋-ofuroya」は完全に日本と同じで裸で入湯である。西欧文化圏出身の場合、かなり抵抗があることは想像に難くない。さすがにまだまだ知らない人と裸の付き合いというわけにはいかない。そのため基本的には時間制人数制限がある、あるいは完全予約制となっている。日本とは違いふらっと手ぬぐい一枚持って訪れるというわけにはいかない。だが裸で体を洗って湯に入るというマナーはまさに寄せられたコメントのように「未だかつてない体験」で「想像したことのない開放感」であるようだ。

 ちなみに「お風呂屋」は1999年に開業の日本人による経営である。日本式のマナーを細かく説明したホームページからは「本当の日本の風呂をオーストラリアの人々に伝える」という理念が実を結びつつある。

◆さらに温泉旅館スタイルへの進化
 まだまだ大ブームには至らないが温泉文化が根付きつつあると思わせるような新たな胎動も見受けられる。ビクトリア州観光局のツーリズムヴィクトリアによると「オーストラリア初の日本の温泉旅館にヒントを得た宿」Onsen Spa and Retreatが州内屈指のスキー場近くにオープンしたという。敢えてスパではなくOnsenを全面に押し出していることから、日本のスタイルへのこだわりがみえる。

 ボーリング調査から始めて掘り当てるという気が遠くなるような労力をかけて完成した温泉。取水制限が多く湯船につかる習慣がさほどない中での銭湯。異文化への好奇心や物珍しさが落ち着いたこれからが、オーストラリアの「Onsen 」の正念場である。

Text by NewSphere 編集部