教皇フランシスコ、ダライ・ラマとの会見拒む 中国カトリック教徒への配慮?

 ローマで12日から3日間行われた「ノーベル平和賞受賞者世界サミット」で、教皇フランシスコは、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世との面会を断った。背景には、中国への配慮があると欧州メディアは報じている。

◆中国政府のカトリック信者への虐待
 バチカンと中国との外交関係は、1951年より存在していない。古くは唐の太宗時代(618年頃)、カトリックのミッションが訪問したことが最初の接触である。第二次世界大戦後に中華人民共和国を樹立した中国共産党は、カトリック教会を認めず、関係は途絶えた。党はカトリックを、西洋諸国の手先ととらえていたようだ。1955年には毛沢東主導で、バチカンとの関係を絶たない聖職者を迫害、拘束した。

 1957年には、政府公認でバチカンから独立した「中国天主教愛国会」をつくった。天主教愛国会の司教は中国の関係当局が任命する。バチカンにとってそれは容認できない。バチカンの教えに忠実なカトリック教徒は、俗にいう地下教会を組織していった。 中国のカトリック教徒は1200万人いるとされ、60%が天主教愛国会に属し、40%が地下教会の信者だという。

 当局の地下教会への弾圧は今も続いている。毎年20人余りの宣教師が拘束されたり、肉体的被害を受けたりしている。上海司教であったジョセフ・ファンは強制収容所に30年拘束され、今年亡くなった。北京オリンピックがあった2008年には、地下教会のメンバーが行方不明になったり逮捕されたりした例が数多くあったという(宗教研究家ナルシソ・サンチョ氏:スライドシェア)。

◆ バチカンと中国が関係改善に向かっている
 先々代の教皇ヨハネ・パウロ2世は、地下教会への支援を止むことなく続けた。 また、第2バチカン公会議典礼憲章に則って、中国政府へ、イエスの教えを説く布教活動が目的であるとして関係改善に努めた。しかし成果は見られなかった。

 昨今は、中国政府もバチカンとの関係改善を望んでいる節がある。中国は、教皇フランシスコが今夏韓国を訪れた際、搭乗機の上空通過を容認した。教皇は機上から、中国にお礼のメッセージを送った。ヨハネ・パウロ2世が1989年に韓国を訪問した際は、上空通過は容認されなかった。

 ただ、正式外交の樹立には、バチカンが中国だけを国家と認め、台湾との外交関係を破棄することを要求している(スペインのインスルヘンシア・デジタル情報紙)。

◆時期的に都合が良くなかったダライ・ラマの会見希望
 まさに、中国との関係改善の可能性が見えてきた時に、ダライ・ラマから会見の要望が伝えられたのである。

 フランシスコ教皇の秘書官ピエトロ•パロリンは、バチカンと中国との関係に問題をつくる要因になってしまう、とダライ・ラマのイタリアでの広報担当シルビア・ネグリに伝えた(スペインのインスルヘンシア・デジタル情報紙)。スペインのエル・ムンド紙には、バチカンの側近が中国を恐れて会見を拒否したのではない。教皇に忠実な中国のカトリック教徒がさらに苦痛を受けるのを避けたいがために、今回の決定となった、と答えている。

 ダライ・ラマの側近のテンジン・タクラによると、彼はバチカンの回答に大変残念がった。しかし、「不都合な関係を生みたくない」「私は平和主義者である」と答えたそうである。

Text by NewSphere 編集部