CIAの拷問、“戦時下ではやむを得ない”が、“テロ脅威を過剰評価”と批判:NYT

 米上院情報特別委員会が12月9日に、CIA(米中央情報局)が2001年の同時多発テロ以降に、テロ容疑者に行っていた拷問に関する報告書を公表した。それを受けて、国連が拷問の関係者らの処罰を求めている。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、拷問へと走った政府とそれを容認した世論を振り返りつつ、自分たちが何をすべきなのかについて述べるコラムを掲載した。

 イギリスのガーディアン紙は、心理学者および心理学のテクニックがCIAの拷問プログラムの開発に関与していたこと受けて、科学者の責務について述べている。

◆国連が拷問の関係者らへの処罰を求める報告書を発表
 国連人権理事会の拷問に関する特別報告官のフアン・メンデス氏による報告書が12月10日発表された。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、「他の国々が、あからさまなであろうとそうでなかろうと言うのです――”なぜ我々を見るんだ? もしアメリカが拷問をするのなら、なぜ我々ができないのだ?”」とのメンデス氏の発言を引用して、アメリカが拷問使用によって、世界中の多くの国で行われている拷問に対する戦いが大きく後退してしまったことを伝えた。

 また、ゼイド・ラアド・ゼイド・アル・フセイン国連人権高等弁務官の言葉を引用して、国連が拷問の関係者らの処罰を求めていることも伝えている。

 「(拷問等禁止条約は)誰も責務を免れさせたりはしない――拷問を実行したものも、政治家も、そしてその政策を規定し命令を下した官僚もだ」

◆アメリカはいったいなぜ拷問へと向かったのか
 同じくニューヨーク・タイムズ紙は、同紙のコラムニストであるロス・ダウザット氏による「なぜ私達は拷問をしてしまったのか? なぜすべきでないのか?」と題した寄稿文を掲載。

 記事では、「ある一定レベルの脅威に直面した場合には、政府は自由を制限するような選択を行うだろう、それが単純に戦時下で政府が行うことだからだ」として、結果さえ出せば許される結果主義や自由を制限する反自由主義は、戦時下においてはある程度仕方のないこととし、9月11日の同時多発テロは、アメリカ国民への物理的・心理的・経済的影響は非常に大きく、それらが拷問を実行させるような政府へと導いたとコラムでは説いている。

 しかしながら、問題はテロの脅威をあまり過大評価したあまり、拷問を利用する必要がない状況下で、拷問の実行を招いたと指摘する。

 ダウザット氏は結論として、国民がきちんと状況を把握し、実際の脅威を見極め、自分たちのモラルのスタンダードを安全保障のために妥協することを正当化させるだけの危険とは何なのかを認識することが必要だと提案している。

◆心理学者がCIAの拷問プログラに加担
 一方、ガーディアン紙は、CIAから莫大な金額を受け取って科学者が拷問プログラムに加担したことを非難している。

 冒頭に「強制的な尋問方法が、確かな機密情報を手に入れる効果的な方法であるとは、決して確立されていない」と述べる、アメリカの諜報機関に科学的なアドバイスを提供する委員会、インテリジェンス・サイエンス・ボード(the Intelligence Science Board)による2006年の拷問に関するリポートを引用。

 尋問に科学的な根拠がないとしながらも、科学的な立場にある心理学者や心理学の手法がCIAによる拷問プログラムの開発に関与することで、あたかも拷問に科学的な根拠があるかのような見方を提供したことを非難した。

 「そのような心理学者は、科学界には用はない」と断罪している。

Text by NewSphere 編集部