平昌・東京の「五輪種目交換開催」を韓国紙が主張 IOC委員長の分散提案受け

 オリンピックで行われる競技について、開催都市以外での実施も可能とする案が、8日、国際オリンピック委員会(IOC)の臨時総会で可決された。同一国内のほか、例外的な場合には国外でも認められる。開催都市の負担を軽減するための措置で、2018年の韓国平昌での冬季大会、2020年の東京での夏季大会についても適用される方針だ。

 IOCは平昌大会組織委員会に対し、ボブスレー、リュージュ、スケルトンのそり競技を国外の競技場で行うことを提案していると報じられている。その候補地の中には、日本の長野も含まれている。

◆莫大な費用を投じた華々しいオリンピックの時代は終わる?
 モナコで8・9日開かれるIOCの臨時総会では、中長期のオリンピック改革案「アジェンダ2020」が審議されている。オリンピック会場の建設やその後の維持管理にかかる巨額の費用負担、環境への影響を軽減することが重要なテーマだ。

 改革の背景には、「開催希望都市の減少という深刻な危機」(朝鮮日報)がある。中央日報は、「10月にノルウェー・オスロが2022冬季五輪招致申請を撤回したことで、IOCが衝撃を受けて出した改革案だ」と述べている。「アジェンダ」の全目標は、オリンピックを今より費用が掛からないようにすることだと、IOC平昌大会調整委員会のグニラ・リンドベリ委員長が語った(シカゴ・トリビューン紙)。

◆平昌オリンピックは会場建設費用の負担に苦しんでいる?
 2018年の開催が決定している韓国・平昌にとっても、この改革は大きな意味を持つ可能性がある。平昌オリンピックは財政難がつとに指摘されており、会場建設工事の遅れが懸念されている。

 シカゴ・トリビューン紙は、ようやく建設が始まった「そり競技場」(ボブスレー、リュージュ、スケルトンで利用)について疑問を呈する。韓国はこれらの歴史がなく、将来的にも興味が持たれなさそうだ。人口4万8千人の平昌に、座席数1万席のそり競技場を、1億ドル(約121 億円)以上かけて建設し、年100万ドル(約1.2 億円)以上かけて維持することに、筋の通った理由はなく思われる、と厳しい。

 リンドベリ委員長によると、IOCは平昌大会組織委員会に対し、国外12ヶ所のそり競技場での競技実施が可能であることをすでに伝えてあるという。

◆韓国国内では断固反対。しかし背に腹は代えられないという姿勢も
 IOCのこの提案に対し、韓国側の反応はどういったものだろうか。ウォール・ストリート・ジャーナル紙のブログ「韓国リアルタイム」の伝えるところによると、平昌大会組織委員会には、競技会場を海外に移すつもりは毛頭ないようだ。8日には、計画は変更せず、もともとの計画を固守するつもりだと発表している。組織委の海外メディア向け広報担当者は、一部種目の開催場所を、とりわけ日本に分散させることは、「国民感情の点から、理解が得られるものではない」と語ったという。

 中央日報もまた、分散開催を受け入れることはできない、とする組織委の立場を報じている。組織委の広報局長によると、「すべての競技場が工事中であり、事後活用計画も立てた状態」であるという。同紙は、特にそり競技場は他の競技場より20%ほど早く工事が進捗している、と伝えている。

 また同紙は、平昌オリンピック、東京オリンピックの両方で競技が分散開催されることを前提としている。その上で、「平昌五輪が終わった後、東京夏季五輪が開催されるため、韓国としては冬季オリンピック種目だけが奪われる可能性がある」との懸念を表明している。

 同様の前提は、朝鮮日報も共有している。しかし同紙は、平昌と東京の交換開催は検討に値する、と積極的な姿勢を取っている。平昌のみならず、東京にも財政難があり、新競技場の建設を当初の10ヶ所から3ヶ所へと計画を見直した、と同紙は伝える。そして、平昌組織委が、今大会で行うにはすでに手遅れだと考えていることを承知しつつ、「互いに」分散開催することにより、費用を削減することができないか、あらためて検討する価値がある、としている。

◆選手や観客への影響は?
 シカゴ・トリビューン紙は、そり競技の各連盟の代表者のコメントを伝え、比較的選手に近い立場からこの問題がどう見えているかを報じている。大まかにまとめると、必要であれば受け入れるが、選手村にさまざまな競技の選手たちが集まって交流するという機会がなくなるのであれば、やはりそれは寂しいことのようだ。

 しかしテレビやネットを通じてオリンピックを楽しむ世界の観客にとっては、一部競技を他国に分散しても、ほとんど影響がないだろう、と同紙は指摘している。

Text by NewSphere 編集部