豪州の新型潜水艦、日本からの調達が有力に 性能評価、防衛協力強化へ

 オーストラリアは、自国が配備する「コリンズ型」潜水艦6隻の老朽化に伴い、新しい艦隊の建造を計画している。2030年までの代替を計画しており、建造にかかる10数年を考慮すると、アボット豪首相は早急の決断を迫られている。

 海外メディアは、国内企業(ASC)の課題、諸外国による一般競争入札への時間的制約などにふれ、すでに実績のある日本からの調達が優勢との見方を示している。

◆一般競争入札を否定か
 アボット政権は当初、地域の雇用を増やすため国内企業による建造を誓約していた。

 一方、ジョンストン国防相が25日の議会で、国営造船会社ASCには「カヌー造りさえ安心して任せることはできない」と発言(後に謝罪)するなど、技術・予算面から国内建造には懸念が示されている。

 外国技術を利用しての国内建造にはスウェーデン、ドイツ、フランス、日本のメーカーが意欲を見せている。ホッキー財務相は2日、地元ラジオのインタビューで、「熟考している時間はない。実績のない企業からの提案を待つ余裕もない」と発言。「すでに活動している」潜水艦を求めていることを明かし、競争入札が行われない可能性を示した。

 さらに同氏の広報担当官は後日、事前に資格を限定した企業に限定した入札は可能と言及し、ヨーロッパ諸国の企業への希望も残されていることを明らかにしている(WSJ)。

◆日本からの調達が有力
 豪国防省当局者は、日本の4千トン級、世界最速の潜水艦「そうりゅう型」が、米の技術にひけをとらず、また豪造船所で維持できるとして評価している。日本の元司令官は、「4千トン級の潜水艦を建造した実績がある日本が優位」と自信を語ったという(ロイター)。

 フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、一般競争入札でなくなることは日本にとって有利となる、とする防衛アナリストの見解を報じている(オーストラリア戦略政策研究所のアンドリュー・デイヴィス氏)。一方で、国防省広報担当官は、まだ決定されていないとコメントしている。

◆根強い反対意見も
 ロイターによると、野党労働党は1日、政府に競争入札への圧力をかけることを明らかにした。有力議員であるクセノフォン上院議員は、地元の雇用が危機に直面しているとして、競争入札にしないことを批判。「今世紀最大の国防物資調達に用いるべき手段ではない」とロイターに話している。

 購入が決まれば日豪防衛協力関係は一層強化されることになる(FT)。また7ヶ月前に安倍内閣が武器輸出三原則を見直して以来、日本にとって最大の武器売却となる。

 アボット政権は来年6月ごろ発表見通しの、初の国防白書に調達方法の詳細を盛り込むとしている。

Text by NewSphere 編集部