ヘーゲル米国防長官辞任、日本に悪影響か 「アジア基軸政策」の本気度に海外誌疑問

 オバマ米大統領は24日、ヘーゲル国防長官の辞任を発表した。オバマ政権下で国防長官が辞任するのは3人目で、異例の事態といえる。辞任の理由は明らかにされていないが、米メディアは事実上の更迭だと報じている。

◆アジア基軸戦略はどこに
 外交専門誌『フォーリン・ポリシー』は、ヘーゲル長官の辞任は、アジア諸国、特に日本など同盟国に、不安と困惑を生む、と分析している。

 オバマ政権の「アジア基軸外交」を推進する上で、ヘーゲル長官の手腕を評価する声は少なくない。日米防衛ガイドラインを見直し、中国からの圧力をにらみ、ASEAN諸国の沿岸警備強化支援を打ち出した。また同地域の多国間主義を推進した。中国がASEANの小国に対し出席辞退するように圧力をかけたにもかかわらず、アメリカと東南アジア諸国連合(ASEAN)防衛相会議の開催を成功させた。

 オバマ大統領が同長官をクビにした理由が何であれ、アジア基軸戦略に基づいた決定ではない。米国はアジアを本当に気にかけているのか、アジア諸国は首をかしげている、と同誌は報じている。

 ヘーゲル国防長官の不幸は、就任後に任務が劇的に変化したことだ、とニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は指摘する。アジア太平洋地域を外交の基軸とするオバマ政権下、彼の当初の任務は、防衛費の削減とアジアにおける軍事力の拡大であった。しかし今や、シリアやイラク紛争に焦点が移りつつある。

◆シリア紛争における対立
 ヘーゲル国防長官の辞任の背景には、シリア情勢に関する政権内の意見対立があると見られている。ベトナム退役軍人で国防庁内でも慎重なリアリストである同長官は、新たな紛争に巻き込まれることに乗り気でなかった。しかしここ数ヶ月、空爆のみに頼るイスラム国(ISIS)戦略はアサド政権を助けるとして、オバマ大統領側と衝突してきた、とフィナンシャル・タイムズ(FT)は指摘している。

 ヘーゲル長官がホワイトハウスに送った、オバマ政権のシリア政策を批判するメモも、辞任の一因となったのでは、とNYTは指摘する。

◆大統領が変化しなければ
 ヘーゲル長官の後任には、ミシェル・フロノイ元国防次官(政策担当)が候補に挙げられている。しかし、オバマ政権の外交政策が大統領と側近達により厳格に管理されている限り、変化が起こることはない、とする識者もいる。

 ヘーゲル長官の前任であるロバート・ゲーツ氏とレオン・パネッタ氏も、重要な政策や戦略に関する討論が大統領の政策アドバイザー等により厳格に管理された事に非常に批判的であった、とFTは報道している。このプロセスがオバマ大統領の外交や軍事政策の遅れや矛盾の原因だ、とNYTも指摘している。

 こうした問題を解決するには、「大統領自身が変化すべき」とFTは結んでいる。

Text by NewSphere 編集部