日米豪首脳、防衛協力強化へ 「中国を怒らせた」海外紙は懸念も、中国は沈黙

 日米豪の3ヶ国首脳会談が16日、G20首脳会合が開かれていたオーストラリア・ブリスベンで行われた。安倍首相とオバマ米大統領、アボット豪首相は、防衛協力関係を強化することで合意した。尖閣問題を含むアジア太平洋地域諸国と中国との領有権問題については、協力して平和的解決を目指すとする共同声明を発表した。米豪メディアは、会談の「成果」と「リスク」を報じている。

◆来年の米豪合同軍事演習に日本も参加か
 日米豪首脳会談は2007年にオーストラリア・シドニーで行われて以来7年ぶり。アメリカ政府関係者によると、アジア太平洋地域での米軍の影響力強化を外交・防衛政策の柱とするオバマ政権が、1年前から計画していたという(ワシントン・ポスト)。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)などによると、3首脳は合同軍事演習の拡大と、海上安全保障やサイバーセキュリティでの協力関係を強化することで合意した。日本政府は「何も決まっていない」としているものの、米豪メディアの多くは、来年6月にオーストラリア北部のクイーンズランド州で行われる大規模な米豪合同軍事演習に、日本が参加する予定だとしている。

 共同声明では、「イスラム国」武装勢力のテロとの戦いやウクライナ問題、エボラ出血熱の拡散防止でも協力していくことを強調した。今年4月のウクライナ東部でのマレーシア航空機撃墜事件では、38人のオーストラリア市民が亡くなっており、「MH17便の撃墜に責任のある者に正義の鉄槌を下す」と強い表現が使われた(WSJ)。

◆豪首相からは中国の経済成長を賞賛する発言も
 軍事面での「3国同盟」は、台頭する中国の海軍力を念頭に置いたものなのは明らかだ。そのため、各紙は今回の3ヶ国会談が「北京を刺激するリスクを負った」「北京を怒らせた」などと記す。オバマ大統領は会談前に、中国に対して「貿易でも海上(の安全保障)においても、他国と同じルールに則るべきだ」と求めたという(ワシントン・ポスト)。

 安倍首相は先週、中国の習近平国家主席と初会談して関係改善の第一歩を演出したばかりだ。オバマ大統領も北京訪問を終え、温室効果ガス削減やハイテク製品の関税引き下げなどで中国との協調路線をスタートさせた。そのため、直後の3ヶ国会談は中国に「裏切り」と受け取られかねない、といった論調が目立つ。ただ、WSJによれば、中国政府から日米豪首脳会談について特にコメントはないという。

 アボット首相は、経済面で依存度を増している中国に配慮してか、G20終了後の記者会見で、オーストラリアと日本、アメリカは「中国の平和的な経済転換」を賞賛していると述べると共に、「3ヶ国の最大の顧客だ」と強調した。オバマ大統領も会談の前日にクイーンズランド大学で行ったスピーチで、「そのサイズと素晴らしい成長において、中国は必然的に地域の将来に重要な役割を果たす」と語っている(ザ・オーストラリアン)。

◆「潜水艦問題」に具体的な言及はせず
 日豪関係では、地元メディアの関心は、やはり潜水艦購入問題にあるようだ。オーストラリア海軍は装備の近代化による増強を図っており、老朽化した自国製潜水艦に代わる最有力候補に日本の『そうりゅう』型が挙がっている。ただし、日本製への切り替えは自国の造船業に打撃を与えるとして、野党や労働組合からの反発も大きい。

 G20閉幕後の記者会見では、アボット首相に対し、地元記者からこの件についても質問が寄せられた。ザ・オーストラリアンによれば、アボット首相は、海軍は中期的に装備を更新する必要に迫られており、次世代の潜水艦についても発注プロセスにあると述べたという。

 しかし、具体的な内容については言及を避け、「オーストラリアのような国が、どうするのがベストかパートナーと話し合うのは当然だ。我々には世界中の友人やパートナーに対して、効果的な防衛部隊を持つ責任がある」などと述べるにとどまった。

Text by NewSphere 編集部