「韓国は完全に取り残された」日中首脳会談受け、“焦り”広がる韓国メディア

 安倍晋三首相と中国の習近平国家主席が10日、北京で初の首脳会談を開いた。これを受け、韓国メディアには「韓国は完全に取り残された」(ハンギョレ新聞)など、焦りとも取れる反応が溢れている。

 また、北朝鮮が8日、スパイ容疑で拘束していた2人のアメリカ人を釈放したことも、米朝関係の前進=韓国の孤立を示す要素として関連づけて論じられている。

◆「中国が日本批判の共同戦線から離脱」
 安倍首相と習主席の初の会談は、日中両国にとっても約2年半ぶりの首脳会談となった。会談に先立ち、両国は尖閣問題について「双方は異なる見解を有していると認識」、歴史認識問題で「双方は歴史を直視」するなどとした合意文書を発表。尖閣周辺海域での不測の事態を回避するため、危機管理メカニズムを構築することなどでも合意した。

 一方、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は就任以来、日本側からの再三に渡る首脳会談の要請を拒否し続けている。その背景には、メディアの論調を含む国民の反日感情への配慮があると識者らは指摘している。しかし、ここにきて韓国の各大手メディアの社説は、首脳会談開催を是とする論調に一気に傾いているようだ。

 中央日報によれば、韓国政府は日中首脳会談に先立ち、「(日中首脳会談の)成功の可否と関係なく(韓国は)毅然と対処する」方針を表明したという。しかし、同紙は会談前日の社説で、内心は違うと指摘。「中国と日本の接近で韓国だけ疎外される可能性を懸念し、苦心を繰り返すほかない立場になった」と記す。ハンギョレ新聞の社説も「中国が日本批判の共同戦線から離脱した今、韓国は完全に取り残された」としている。
 
◆脱「親日コンプレックス」を促す社説も
 中央日報の社説はさらに、「韓国政府は北京の気流を直視して韓日首脳会談が実現する環境作りとタイミングをつかむことに全力を傾けなければならない」と、中国に倣って首脳会談を開くべきだと明言している。そして、国民は「親日コンプレックス」から抜け出し、国益を最優先する現実路線に転換すべきだと主張している。

 とはいえ、同社説は、「歴史暴走を中断する日本の努力が先行しなければならない。特に安倍首相が慰安婦問題に前向きな立場を見せなければならない。それでこそ早い時期に韓日首脳が会う条件を作ることができる」と、従来の政府見解と同様の前提条件を掲げる。一方、安倍首相は6日、別所浩郎駐韓国大使に託した親書を通じて、「前提条件なし」での全面的な日韓対話の再開を改めて求めたという。

 上記の親書に触れた韓国英字紙『コリア・ヘラルド』の社説もまた、「建設的で意味のあるサミットを開催するため、正しい雰囲気作りをしなければならない」と、日韓首脳会談開催の必要性を認めている。両首脳が顔を合わせる直近の機会で首脳会談が実現する可能性は低いものの、その間に実務者協議を積極的に進めるべきだとしている。

 ◆米朝接近で北朝鮮問題でも「取り残される」
 一方、朝鮮日報とハンギョレ新聞の社説は、北朝鮮が8日、スパイ容疑で拘束していた2人の米国人を釈放した件にも触れている。拘束されていたもう一人の米国人は既に先月釈放されており、「北朝鮮による米国人拘束問題は全て解決した」と朝鮮日報は記す。

 ハンギョレ新聞によれば、韓国政府は、これによって6ヶ国協議などアメリカの北朝鮮政策は何も変わらないという見解を示しているという。しかし、同紙は最近のアメリカの北朝鮮外交が積極性を増している例を複数挙げ、北朝鮮問題でも韓国が取り残されることを懸念している。

 朝鮮日報の社説も同様の見方を示している。日中関係についても「両国の対立が一気に解消することはないはずだ」としながら、「対話の窓口が開かれたことだけは間違いない」と記す。そして、「問題はこれまで中国と歩調を合わせ、安倍首相との首脳会談に応じないことを重要なカードと見なしてきた大韓民国の外交政策だ」批判。「突然の米朝雪解けムードと中日接近を横目で見ながら、国民は一層の不安を感じざるを得ないだろう」と結んでいる。

Text by NewSphere 編集部