中国、バブル崩壊間近か? 「日本と同じ道をたどる」と専門家が報告

 中国が間もなくバブル崩壊を迎え、日本と同じような「デフレスパイラルに陥るかもしれない」という報告が10日、バンクオブアメリカ・メリルリンチから発表された。ブルームバーグや中国の専門紙が取り上げている。

【日本のバブル崩壊前夜と酷似】
 報告書を書いたのは、日本人株式アナリストの神山直樹氏とシンガポールの研究員、デビッド・チュイ氏だ。両氏の分析によれば、現在の中国と、バブル崩壊を経てデフレ状態に入った1980年代末から90年代初めの日本の状況は非常によく似ているという。両氏が例に挙げる類似点は「アンバランスな成長」「政府の刺激策」「過度な不動産投資ブーム」「銀行の資金不足」などだ。

 ブルームバーグは、当時の日本が経験した「失われた10年」は、日銀が不動産バブルに対応して1989年に金利を上げた時に始まったと記す。それが世界経済の不調と重なった結果、不動産価格が急落、バブル崩壊につながった。

 現在の中国経済は当時の日本同様、輸出への依存度が非常に高く、世界的な金融危機でその需要が落ちているという状況もよく似ている。中国政府は事態を打開するため、景気刺激策を行ったが、それがバブルを煽る結果となった。さらに、中国の金融投資専門紙『China money network』によれば、中国政府は今年に入って、不動産バブルによる住宅価格の上昇などを抑制するため、実効金利を大幅に上げる策に出た。これもバブル崩壊前夜の日本と同様の政策だ。

【元凶の不良債権は当時の日本を大幅に上回る?】
 報告書は「中国は日本の失敗をほとんど同じように繰り返している」とし、その不動産市場には今、暴落の兆しがあると警告する。経済ニュースサイト『Quartz』は、日本の「失われた10年」とは、バブル崩壊によって銀行が抱えた莫大な不良債権を、政府や日銀が10年余りの間放置したことと同義だと記す。

 『China money network』は、日本経済がようやくこの停滞期から抜け出したのは、竹中平蔵金融担当相(当時)が作成した「金融再生プログラム」(いわゆる「竹中プラン」)を実行した2002年のことだとしている。

 ブルームバーグによれば、中国の銀行が抱える不良債権は、今はそれほど多くないと見られている。しかし、ひとたびバブルが崩壊すれば、不良債権比率は当時の日本(最高8%)よりもはるかに高くなる可能性もあると、メリルリンチの報告書は記す。『China money network』は、二桁に達する可能性に触れ、それを見出しに取って警告を発している。

【習近平体制が落ち着くまでは・・・】
 報告書を書いた神山・チュイ両氏は、問題解決には不良債権処理と金融システムの再構築が有効かつ不可欠だと主張する。しかし、『Quartz』は「それを行うと一時的に経済成長が止まることになる」と記す。

 また、今の中国政府には素早い対応は期待できないというのが、神山・チュイ両氏の見方だ。習近平政権は今だ権力の基盤固めに追われていてそれどころではなく、対応するにしても「1年や2年先になりそうだ」という。各メディアは、報告書のこのくだりの分析も強調して取り上げている。

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Text by NewSphere 編集部