中国検察、日本の市議に死刑含む求刑…覚醒剤運搬容疑で 無罪主張の行方は

 昨年10月、中国広東省の広州白雲国際空港で、日本の市議が、覚醒剤運搬の容疑で身柄を拘束された。空港の荷物検査で、所持品の中から覚醒剤が発見されたのだ。市議はその後、12月に正式に逮捕され、今年7月に起訴されていた。そして、今月26日より28日まで、広州市中級人民法院で公判が開かれた。市議はそこで無罪を主張した。

【事件のいきさつ】
 起訴されているのは、愛知県稲沢市議の桜木琢磨被告(70)だ。中国国営新華社通信、同国営通信社『中国新聞社』などが報じているところによれば、桜木市議は昨年10月29日、「ハッサン」と名乗る自称ナイジェリア人と面談をするために、広州に渡航した。

 ニュースサイト『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』(以下IBT)によると、市議は、公務の傍ら、貿易会社を経営しているという。香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』(以下サウスチャイナ)によると、ハッサンは市議に、ナイジェリアでの投資による損失、約70万米ドル(現在のレートで約7200万円)を取り戻す手伝いをしようと持ち掛けていた(朝日新聞によると、投資詐欺による損失)。そのために、広州に来て、いくつかの書類にサインすることを市議に求めていた。

 ハッサンの手はずにより広州を訪れた市議は、面談を済ませた後、ハッサンから、日本にいる妻に荷物を届けてほしい、と頼まれた。

【市議は無罪を主張】
 市議は、ハッサンの使いのマリ人の男から、婦人用厚底靴の入ったスーツケースを受け取った、とサウスチャイナ紙は報じる。そして、日本への帰国のために、10月31日、広州白雲国際空港で搭乗手続きをしていたところ、荷物検査で、厚底靴の靴底とスーツケースの伸縮式の取っ手の中から、覚醒剤メタンフェタミン28袋、合計3.28キログラムが発見されたという。

 市議はその後、麻薬運搬罪(覚醒剤も含まれる)で逮捕、起訴されたが、預かった荷物の中に覚醒剤があったとは気づいていなかった、と主張している。26日の公判でも、市議は起訴事実を否認し、無罪を主張した。

【誰でも、知らないあいだに「運び屋」にされる危険が。中国では厳罰】
 外務省は「海外安全ホームページ」で、海外渡航者に向けて、くれぐれも、違法薬物の所持・運搬等に関わり合いにならないようにと、切々と訴えている。そこでは、「知らない人への荷物の転達を持ちかけられた場合,いくら相手から『荷物は危ないものではない』等と説明されたとしても,安易に引き受けると,その後,一生後悔することになるかも知れません」と述べられている。

 市議にもこの危険が迫っている。CNN、IBTが注目するとおり、中国では覚醒剤・麻薬の取り締まりが厳しく、厳罰が下される。中国の刑法では、覚醒剤もしくは麻薬を50グラム以上押収された場合、死刑になる可能性があり、これは外国人にも適用される、と『中国新聞社』の英語ウェブサイトEcns.cnは伝える。朝日新聞によると、50グラム以上の覚醒剤を、そうと知りながら運搬した場合、「懲役15年か無期懲役、または死刑」になるという。

 中国ではこれまでに、5人の日本人が、(海外への運搬に適用される)「麻薬密輸罪」で死刑を執行されている。

 市議の担当弁護士は、今回の裁判について、自分がまるで、不可能事に挑むドン・キホーテのように感じている、と述べたと報じられている(IBT)。しかし、無罪判決という最善の結果に向けて、ベストを尽くす、とも語っている。

 公判は28日、結審した。検察側は「懲役15年以上か無期懲役、または死刑」という量刑に加え、財産没収を求刑した(NHK)。今後は、裁判所による判決が待たれる。

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Text by NewSphere 編集部