ケリー長官、「アジア重視」明言で中国けん制 本気度に疑問も=海外紙

 ケリー米国務長官は13日、ハワイ・ホノルルでの演説で、オバマ政権が今後、アジア太平洋地域における外交努力にさらなる重点をおいていく姿勢を示した。

 2009年以来、アジア重視の外交戦略を強調してきたアメリカだが、中東情勢の悪化、ロシアのウクライナへの介入など緊急の問題が山積し、アジアでの外交政策に目立った進展はみられない。ケリー長官は、「国務長官として緊急問題の対処のみならず、長期的な視点でのアメリカにとってのチャンスを明確に捉えていく義務がある」、との考えを示した(ニューヨーク・タイムズ紙)。

 ケリー長官は、南シナ海での緊張緩和のための地域間での協力体制、人権保護、さらに長期目標として経済成長促進、クリーンエネルギーの開発にも言及した。

【南シナ海の安定化と米中関係】
 南シナ海における領土問題については、各国が自主的に挑発的な行動は避けるように、というアメリカの姿勢を明確にした(印エコノミック・タイムズ)。中国と近隣諸国の領土問題は、平和的外交手段によって解決されなければならない、とした。アメリカは今後も中立姿勢を貫くものの、問題は国家安全保障上の問題であると位置づけた。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)各国がアメリカの提案を歓迎した一方で、中国は懐疑的な姿勢を見せ、反論。米中の関係改善への障害が明らかになった、と同紙は報じている。

 ただしケリー長官は、「アジアで重要な役割を担う中国における安定と平和、繁栄を歓迎し、経済、安全保障面における規範を支持する」とも述べ、対立回避の姿勢も示している。中国が提案する米中の「新型大国関係」については、「言っているだけでは構築できない」として、北朝鮮の核問題、イランの核問題、気候変動対策など、共通課題に対する協力を求めた。

【今後の課題】
 アジア外交においてアメリカは、対中国政策よりもアジア太平洋地域における自国の影響力を強めることに重点を置きたい姿勢だが、アジア政策の要は経済的、軍事的にも対中国路線を取っている、とワシントン・ポスト紙は論じている。中国は、地域の問題に対するアメリカの介入を、対中国戦略の一環として受け止めているという。

 またニューヨーク・タイムズによると、専門家の間では、問題が山積する現世界情勢の中、ケリー長官が実際にアジア外交政策に力を注ぐことができるのか、疑問視する声が上がっているという。

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Text by NewSphere 編集部