中国の“口だけ投資外交”に中南米が不満 地元の雇用拡大につながらないとの批判も

 2005-2013年までの中国の南米への投資額は1020億ドルと米ボストン大学のGEGIは統計している。そして先月のブラジルでのBRICS首脳会議の後、習主席はベネズエラ、アルゼンチン、キューバを訪問し、巨額の投資をさらに約束した。

 中国は中南米に対して積極的に投資の約束を交わしているが、投資受け入れ国では約束された投資が到着しないという不満が起きている。

【アルゼンチンへの中国からの投資の現状 】
 アルゼンチンのラ・ナシオン紙によると、アルゼンチンのキルチネール前大統領は2004年に中国から、この先10年間に鉄道網の発展や火力電力開発に200億ドルの投資をすると確約を得た。さらに住宅建設費として60億ドル、通信網の発展に4億5000万ドル、通信衛星の開発テクノロジーに2億6000万ドルが追加された。しかし、現在までその投資は実現されることなく、逆に中国との貿易赤字だけが拡大したという。

 同紙によると、2004年の両国の貿易はアルゼンチンに12億3000万ドルの黒字が経常された。しかし、2013年は50億3000万ドルの赤字になっている。また、中国の関心は鉱物・エネルギー資源と農牧品の輸入だけである、と同紙は指摘している。

 またアルゼンチン政府は中国からの投資を見越して、価格が安い中国に1000車両を発注した。しかし国民は、「車両はきれいでも中国で作られたもので、我々には仕事はくれない」と不満を述べている。

 国民は政府が中国に頼り過ぎることを皮肉って「我々はアルヘンチナだ」と言っている。アルゼンチンはスペイン語で「アルヘンティナ」、中国は「チナ」と呼ぶ。そこから「アルヘンチナ」という皮肉った造語が生まれた。

【ブラジルへの中国投資の実態】
 ブラジルでは中国からの投資が減速している、と隣国ペルーのRPP紙は報じている。

 同紙によると、大豆で最大規模の農協、Aprosojaの責任者のエデオン・バス氏が「中国人が計画したプロジェクトで当初のプラン通りに実現された物件は何ひとつない」と述べている。

 また、中国のChongqing Grainグループが、当初20億ドルの予算でバイア州での大豆の生産とその設備投資を行う予定だったが、実際には当初プランの15%が投入されただけであるという。

 さらに、当初ブラジル政府は両国の取引が伸展すれば同国が誇るエンブラエル社の飛行機も中国が購入してくれると期待していたが、中国側では色々と理由を付けて購入を回避している、と記事は報じている。

 中国の投資はエネルギー開発と企業の買収のみが目的との見方もある。

 中国がエネルギー資源への投資で油田地帯などを積極的に購入することに対して、ブラジルでは国民の間でも、領土が中国によって侵略されるのではないかという恐れから中国への敵対意識も生まれている。そして2010年には外国人の土地購入を規制する法律が施行された。

 最後に同紙は、2007-2012年の半ばまでの中国からの投資は当初予定の3分の1だけが実際に履行された、とのリオデジャネイロに本部のある中国・ブラジルビジネス会議の報告に触れている。

【中米では投資効果に疑問の声】
 中米のシンクタンクのCCRTD (Caribbean Centre for Research on Trade and Development)が今年1月に発行したレポートのタイトルは「中国の投資はカリブ諸国にとって良いことなのか?」となっており、中国の投資の効果に懐疑的な見方をしている。

 レポートによると、中国からの投資はいつも中国企業を伴っており、プロジェクトで雇用する労働者も中国から連れて来た人々で、現地の企業が落札するケースは少なく、よって現地人の雇用の促進に繋がらず、またテクノロジーの移譲も存在しない。

 さらに、中国は中国と国交のないCARICOMメンバー国との交渉を拒否しているため、欧米と対するときとは異なり、中国に対しては地域全体で協調行動を取れないという欠点を同レポートは指摘している。

Text by NewSphere 編集部