拉致問題解決、今が絶好のチャンス 中国に見放された北朝鮮は本気と米紙報道

 日本と北朝鮮は1日、中国の北京で日朝政府間協議を行った。5月末に合意した日本人拉致被害者の再調査を行うために設置した「特別調査委員会」について、北朝鮮側から説明があった。日本からは、伊原純一アジア大洋州局長、北朝鮮からは、ソン・イルホ日朝交渉担当大使が出席した。

 2002年に北朝鮮は13人の拉致を認め、5人を帰国させたが、他の被害者は死亡、あるいは、入国していないと伝えられた。しかし、信憑性にかけるため、日本政府は再調査を要請していた。安倍首相は、拉致問題解決を優先課題と位置づけている。

【ミサイル発射は日本に対するけん制?】
 先週末、北朝鮮は短距離弾道ミサイルを日本海にむけて発射した。日本政府は、北京の大使館ルートを通じて北朝鮮に抗議。協議の始めにも、伊原代表が、ミサイル発射は国連の安保決議に違反しているとして、遺憾の意を表明した。それに対し、北朝鮮代表のソン代表は、北朝鮮が、国連決議を認めていないこと、ミサイル発射は地域の平和と安定のためだと反論した。AP通信は、ミサイル発射は、日本に対する挑発やけん制の意味があったのではないか、との韓国の見解を紹介。

 一方、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が取り上げたドイツの調査機関の推測によると、今週末に中国の習国家主席が韓国を訪問し、韓国の朴大統領と北朝鮮の核問題などについて会談する予定だが、北朝鮮は、それに合わせて日中韓を挑発・けん制するためにミサイル発射に踏み切ったという。

【北朝鮮を信じるか否か?】
 日本政府は、日本人拉致被害者の再調査が納得のいく形で行われ、信用できる調査結果が出された場合、北朝鮮に対する制裁を一部解除することを提案している。北朝鮮は核兵器開発やミサイル発射に伴い、国連から制裁をうけている。日本は、国連で決定された制裁に加え、独自に制裁を設けており、今回解除する対象になっているのは、日本独自の制裁となる。

 ただ、2008年にも北朝鮮側が拉致被害者の再調査を約束したため、同様の制裁解除を提案していたが、北朝鮮は調査を行わず、制裁も解除されなかった。こうした経験から、日本政府は北朝鮮政府に対し懐疑的になっている、とAP通信は伝えている。そのため日本政府は、調査の進捗状況と詳細をしっかりと把握しようと努力しているという。

 一方、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、中国とのビジネスパイプであった張氏の粛清後、中朝両国の関係に陰りが見え始めているため、今回は日本にとって拉致問題解決の絶好のチャンスだ、という識者の推論を掲載。北朝鮮側は問題解決に今までになく真剣であり、制裁解除への道を開こうとしているという。

 また、ロイターも韓国の拉致被害者家族連合の代表であるチェ・ソンヨン氏からの情報として、今年11月に拉致被害者横田めぐみさんの娘であるキム・ウンギョンさんが訪日することで合意したと報じた。これは日朝政府間協議により日朝関係の改善によるものだという。ウンギョンさんの存在を公表してから、北朝鮮は一貫して、めぐみさんの両親である横田夫妻の訪朝を要望していた。しかし、今回の合意から、北朝鮮側が柔軟性を示し始めたともいえる。

めぐみ、お母さんがきっと助けてあげる [amazon]

Text by NewSphere 編集部