ブータン「幸福度調査」を日本の専門家が支援 協力50周年含め、地元紙が期待

 ブータン王国の「国民総幸福(Gross National Happiness、GNH)」調査を支援するため、日本の専門家が派遣されることになった。

 ヒマラヤの小国ブータンは、国内総生産(GDP)よりも、国民が幸福を感じる度合い「国民総幸福(GNH)」を重視した国づくりを目指していることで有名である。

 今年9月に実施される第3回GNH調査について、国際協力機構(JICA)が支援を行う予定、とブータンの『Bhutanese』が報じている。JICAの研究員が、サンプル調査を実施するとともに、世論調査の分析や、調査技術の向上につながる助言なども行うという。

【幸福な国を目指して】
 ブータンは九州とほぼ同じ面積で、人口は73万3千人(2013年ブータン政府資料)。過去に植民地化されたことはなく、何世紀にもわたって世界から隔絶され独立を維持してきた。入国を認められる外国人の数も制限されている。

 精神的な豊かさと物質的な豊かさのバランスを取る新たな指標として、ブータンで1972年に提唱されたGNHの理念は、日本でも関心を集めている。昨年6 月には、住民の幸福度向上をねらう自治体により、GNHの勉強会が発足している。

 世界的な注目を集めているGNHであるが、その有効性には疑問も投げかけられている。

 GNHは幸福感にだけ重点が置かれるため、ブータンには、慢性的な失業、貧困および汚職問題が存在する、と英テレグラフ紙は指摘している。また、ブータン政府自身も、幸福度を測る調査に不足がある点を懸念していた、と『Free Malaysia Today』は報道している。

【50周年を迎える日本とブータンの協力関係】
 日本とブータンの協力関係には長い歴史がある。

 6月18日、「日本ブータン協力50周年記念式典」がブータンで開催された。日本とブータンの協力関係は、1964年にブータンを訪れ農業分野で大きな貢献を果たした故西岡京治氏に遡る、と『Bhutanese』は伝えている。それから50年間、300人以上の日本人が技術分野でブータンを援助してきたという。

 現在でも日本は、ブータンの生活水準向上を目指し支援を差し伸べている、と同メディアは報じている。全家庭における電気供給や、温暖化のために溶けたヒマラヤの氷による洪水問題に対処するため、最新技術が提供されているという。

 経済協力開発機構(OECD)の統計によると、日本はブータン最大の政府開発援助(ODA)国であり、57億円に上る支援を行っている。

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Text by NewSphere 編集部