“ベトナムが折れるしかない” 中国の石油採掘問題、両国一歩も譲らず 海外識者が懸念

 中国政府の楊国務委員がベトナムを訪問し、18日ハノイでベトナムのファム・ビン・ミン外相と会談した。

【採掘装置以来初の高官対談だったが…】
 この会談は、中国が南シナ海の西沙諸島近海に石油採掘装置を設置したことにより両国の関係に緊張が高まっていることが焦点だった。今回の対話は、採掘装置の設置以来初めてとなるトップ級会談となる。しかしウォール・ストリート・ジャーナル紙(ウォール紙)は「互いに歩み寄りの兆しは見られなかった」と伝えている。

 楊国務委員はハノイ訪問の目的を「率直かつ綿密な話し合い」を行うことと語っていた。しかし両国の関係は「厳しい局面」にあると述べている。

 採掘装置の設置以来ベトナムでは中国に対する抗議運動が頻発している。その多くは暴徒化し、少なくとも3人の中国人が死亡、多数の外国企業工場が被害を受けたと同紙は報じている。

【非難の応酬】
 ベトナム・ニュースは「5月26日のベトナム漁船沈没に際し、中国船は追突されたように見せるためベトナム船の航路をわざと逆行するように動いていた」と11日に報道している。

 また中国外交部の華春瑩報道官は18日北京での定例会見で「中国とベトナムの関係は、石油採掘に対するベトナムの度重なる違法な妨害により緊張関係にある」と発言している。
 
 ブルームバーグによると、ミン外相は対談に際し「南シナ海」のことをベトナムでの呼称「East Sea(東海)」という名を用いており、華報道官は会見でパラセル諸島のことを「Xisha Islands(西沙諸島)」と中国名で呼んでいたという。

 さらにニューヨーク・タイムズ紙によると、ベトナムは当初から海洋法条約のもと交渉を求めていたが、中国側は「西沙諸島に領有権争いは存在しない」と主張してきたという。同紙は、共産圏同士の二国間対談で一切の歩み寄りが見られないことは珍しいとの見解を示している。

【対談での解決は無理と専門家】
 ブルームバーグによると、アジア太平洋安全保障研究センターのアレクサンダー・バビング氏は「ベトナムが中国側の条件をやむなく受け入れることぐらいしか解決策はないかもしれない」と語っているという。

 またウォール紙によると、東南アジア研究所のイアン・ストーリー氏も「これまで中国が高官の対談を拒否してきたことを考えれば今回の意義は大きいが、それでも石油採掘の問題はそう簡単に解決しないだろう。ベトナムは撤去を求め、中国は拒否する、という展開が目に見えている」との見方であるようだ。

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、楊国務委員は特に南シナ海における主権主張の強行派の呼び名が高いとのことである。2010年のASEAN会合で当時のヒラリー・クリントン国務長官が「南シナ海における領有権争いの対話による解決」を提唱したときも、異論を唱えたのが楊氏だったという。クリントン氏はこうした楊氏の態度について自身の著書で「中国はアジア一の大国だが、その優位性を顕示する姿勢は近隣国に対しうまく機能していない」と述べているという。

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Text by NewSphere 編集部