“日本肯定”は韓国最大のタブー…首相候補に集中砲火の理由を海外紙分析

 韓国の朴槿恵大統領は9日、旅客船セウォル号沈没事故の対応をめぐり引責辞任した鄭ホン原前首相の後任候補として、文昌克・元中央日報主筆を首相に指名した。

 しかし、同候補の過去の発言が「非国民的」だとして、与野党や国民などから強い非難を浴びている。

【問題となった発言と文氏の釈明】
 韓国の国営テレビKBSが11日、2011年に文氏がソウルのキリスト教会で、韓国が日本の植民地となったのは、あなた方には試練が必要だという「神の意思」だったと語っていたと報じた。

 2009年には、南北関係を改善し、自由主義路線を促進したとして尊敬されている、金大中元首相と盧武鉉元首相を批判したコラムを執筆している。

 文氏は12日、過去の発言について後悔の念を示したものの、意図が誤解されているとして、辞退はしないと述べた。

 同氏によると、2011年の教会での発言は「宗教人として」、2009年のコラムは「フリーライターとして」のものであり、「一般人の感覚と距離があるかもしれない」とした。また、「首相に任命されたら、バランスのとれた公正な方法で公務員としての義務を果たす」と語った。

 首相室は、KBSが「悪意を持って歪曲した」編集をしたとして、同局に対し法的措置をとると述べた。

【与野党、国民から猛バッシング】
 最大野党・新政治民主連合は、文氏が「反国家的で非道なコメント」をしたとして非難し、朴氏に指名撤回を要求。与党セヌリ党の一部の議員も、文氏に辞退を迫った。

 金大中平和センターと盧武鉉財団もまた、朴氏に指名撤回を要請。「国民のコミュニケーションと社会調和を求める声を拒否する残念な指名だ」との共同声明を出した。

 文氏の名前はツイッターのトレンドトピックのランキングで急上昇し、ほぼすべてのツイートが同氏の発言を非難するものだと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。

【海外紙の見解】
 韓国の聯合ニュースは、文氏の教会での演説により、議会承認の見通しに陰りが出たと報じた。また、今回の大きな反発は、日本とその植民地支配に対し深い恨みを抱く多くの韓国人の心情を浮き彫りにしたと指摘した。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、韓国の政治家にとって最も深刻な違反は日本帝国の朝鮮半島占領を正当化することで、文氏はそれを侵したと報じた。また、今回の騒動以前にも、同氏の政治経験不足に対する批判があったと指摘した。

 朴氏は首相候補として文氏の前に安大熙・元最高裁判事を指名していたが、同氏が退任後に高額な弁護士報酬を得ていた疑惑が持ち上がり、先月下旬に辞退している。朴氏の人事はまた失敗に終わりそうだ。

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Text by NewSphere 編集部