中国軍事費が約15兆円に増加 米識者が“恐れるに足らず”と主張する5つの背景とは

 米国防総省は5日、中国の2013年の国防費を1450億ドルと発表した。特に無人飛行機や護衛艦、ジェット機、ミサイルやサイバー兵器などの強化に費用が使われているとの見込みだという。拡大を続ける中国の軍事費について、米各紙が論評を繰り広げている。

【中国の自己申告は2割引?】
 ロイターによると、会計の不透明性などにより中国の支出の正確な算出は困難としつつも、米国防総省の試算は中国の公式発表である1195億ドルを21%も上回っていたと報じている。

 これに対し中国国防省は「断固抗議する」旨を同省ウェブサイト上で訴えており「中国はあくまで通常防衛に必要な費用を使っているだけなのに、毎年アメリカは”中国が軍事拡大している、地域に脅威をもたらしている”という報告を出してくる」と反論しているという。

【縮小する米軍事費 拡大する中国軍事費】
 この米国防総省の報告は、折しもアメリカと中国がシャングリラ会合で互いを厳しく批判しあった直後に発表された、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(ウォール紙)は伝えている。

 同会合では、ヘーゲル国防長官が中国の「地域の安定を損なう一方的な行為」を批判し、それに対し中国が「アジア地域における米政府の干渉は中国を敵国扱いする脅しだ」と対抗した。

 オバマ大統領と習近平国家主席は、アジアでの影響力争いを繰り広げつつも、両国の関係改善に努めてきた。しかし中国の領有権争いが近隣各国と増したことから、その努力も妨げられている状態と同紙は述べる。

 また、イラクとアフガニスタンからの撤退もあってアメリカの軍事費は縮小傾向にある一方、中国の軍事費はここ20年拡大を続けており、2004年からは平均毎年9.4%増大していると同紙は伝えている。

【それでも怖れるに足らずと米誌分析】
 しかし、それでも中国の軍事費は、アメリカの5800億ドルと比べるとまだまだ低いとウォール紙は報じる。世界銀行によると、アメリカがGDPの4.2%を軍事費にあてているのと比べ、中国は2%だという。アメリカの軍事費は、縮小傾向にあるとはいえそれでもまだ世界のどの国よりも多い、とのことだ。

 フォーブス誌では、ロレン・トンプソン氏が「中国がアメリカにとって脅威とならない5つの理由」と題し、その見解を述べている。それによると、以下の事情により中国が米に及ぼす影響は少ないとのことである。

1. 地理的制限
西には不毛な平野と砂漠、南にはヒマラヤ山脈、北にはロシアの大草原、東には広大な海があり、これ以上どこにも領域を広げようがない。

2. 人口傾向
一人っ子政策により、この先は高齢化社会が待っている。労働人口の減少と社会保障費の増大により、必然的に経済成長の頭打ちが訪れる。

3. 貿易への経済的依存
他のアジアの国同様、中国も「安い労働力による貿易の優位」により発展してきたため、貿易相手国との賃金格差が縮まれば、これもいずれ行き詰まる。

4. 国内の政治事情
汚職が横行しているが、中国共産党の一党独裁体制であることから改革される可能性が低い。

5. 軍の脆弱性
中国の軍はまだまだ米軍の足下にも及ばない。例えば、中国は250の核弾頭を持っていると見られているが、そのうちのほとんどはアメリカまで届かない。一方米軍は4600の核弾頭が発射可能な状態であり、さらに加えて2700が倉庫に待機している。

 以上のことから、アメリカにとって中国は恐れるに足らない存在、とトンプソン氏は主張している。

中国人民解放軍の内幕 (文春新書) [amazon]

Text by NewSphere 編集部