「日米の“脅し”には屈しない」中国軍幹部、平和と安定求める両国を批判

 30日から3日間にわたりシンガポールで行われたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で、アメリカと日本が相次いで中国の行動に警告を促したことに対し、中国が批判で応戦した。

【日米そろって”脅しと威嚇”と中国】
 ヘーゲル米国防長官は、中国が一方的に設定した防空識別圏や南シナ海での油田掘削を批判。続いて発言した小野寺五典防衛相も、公海での艦船および航空機の違法な航行を非難した。これに対し、中国の代表である王冠中副総参謀長は「日米がそろって中国を威圧的に脅している」と反論した。

 フィナンシャル・タイムズ紙によると、王氏は「アメリカと日本の発言は、お互い協力し共謀して“先に言った者勝ち”の利で中国を挑発してやろう、といった印象を受ける」と発言したという。

 さらにニューヨーク・タイムズ紙によると、王氏は「ヘーゲル国防長官は、このような多くの聴衆を面前に中国を根拠なく批判し、アジア地域に混乱をもたらそうとしている」と述べている。また王氏はアメリカと同調する日本についても「安倍首相はまるでヘーゲル氏とデュエットでも歌っているかのよう」と批判したという。

 同紙によると、中国メディアも、こうした日米の発言を「脅しと威嚇の言葉が満載」と伝えているという。

【中国は米政府を信用していないので】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、国防大学教授で人民解放軍少将の朱成虎氏は「アメリカは、中国の対応に非常に重大な誤りを犯している」と同紙に語っているという。

 朱氏は「アメリカが中国を敵として扱えば、中国もアメリカを敵と見なす。でもアメリカが中国を友人と扱えば、中国は忠実な友となり得る」と語り、アメリカは中国に対し説教たれて非難するのではなく、対等なパートナーとして扱うべきだと主張したという。ちなみに同紙によると、この朱氏は、米政府のアジア基軸政策に対する人民解放軍の不振を色濃く反映した人物であるそうだ。

 ヘーゲル国防長官は「中国へ言を向けるのは地域の平和と安定が目的」と語っている。また米当局も「オバマ大統領のアジア基軸政策も決して中国封じが目的ではない。むしろ中国とは信頼関係を築き、協力関係を拡大したい」と繰り返し発している。

 しかし朱氏は「米政府が中国と協力関係を築きたいとか、あるいは領有権争いに関して中立であるとか言うのを信じるほど中国はバカじゃない」と同紙に語っている。

【トップではない人物を送り込んだ中国】
 フィナンシャル・タイムズ紙によると、シャングリラ会合はアジア太平洋地域の安全保障問題に取り組むべく開催されているが、近年はもっぱら中国の政策方針に対する質問と説明の要求が焦点となりつつあるという。

 中国はこの会合自体が「欧米のお膳立て」と見なしているが、自身の主張を確実に届けるために、それでもあえて参加したという。他の多くの参加国は国防のトップを派遣してきたが、中国はそうではなかった。代わりに、英語が話せる学者肌の人物と軍所属人員を代表団とした。

 その思惑については、「会合の正当性を下げるため」というのがフィナンシャル・タイムズ紙の分析だ。あるいはウォール紙の見方によると「中国政府への非難は受け付けない」という姿勢の表れではないか、とのことである。

 中国の実際の思惑は定かではないが、海外メディアは中国の動向を詳細に報道しており、今後も焦点となることは間違いないといえる。

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Text by NewSphere 編集部