“民主化よりも経済成長” 天安門事件25周年を控え、共産党支持の声を米紙報道

 中国は今年で天安門事件から25年を迎える。しかし、いまだにこの事件について中国国内で語られることはほとんどない。当局がインターネットでは関連情報にフィルタリングをかけるなど、厳しく規制しているためとみられている。今年は特にその規制が厳しいようである。

【中国共産党の体質の変化】
 天安門事件以後の中国共産党の腐敗ぶりについて、フィナンシャル・タイムズ紙は詳しく報道している。同紙の分析によると、かつては強力な一党独裁体制を敷いていた中国共産党だが、現在ではその体制は危ういものになっている。その源は皮肉にも経済成長と民主化運動の弾圧に成功したところにあるらしい。

 天安門事件後、党として生き残るため、次の4つを柱に掲げた:たくましい成長、洗練された弾圧、国が後押しする国家主義、社会的エリートの選出である。しかし現在はそれがかえって党の足かせとなり、土台を脅かしている。

 高い経済成長率により政治的エリートは莫大な富を手に入れ、また反体制派を弾圧することでそれらを手に入れるための理想的環境を生み出した。中国共産党に入党し、階級を上り詰めた者も、党への忠誠心は乏しく、自身のパトロン探しに忙しく、富を増やすことに専念しているという。党内の汚職がその腐敗体質を端的に表している。

 同紙は関連記事の最後に「再度天安門事件が起きれば、中国共産党は生き残れないだろう」と、その将来を厳しく予測している。

【中国一般民衆の反応】
 前述したとおり、今年の取り締まりは特に厳しく、ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、今年は反体制派の活動家のみならず、彼らにインタビューを行った報道関係者、天安門広場でVサインをした写真を撮影した一労働者まで逮捕されているという。

 中国警察は西側のジャーナリストに数日間は天安門広場に近づかないよう警告した。アムネスティ・インターナショナルは50人近くの人が逮捕、自宅軟禁になったとして、そのリストを公開した。

 このような動きに対し、中国国内の人々の考えは様々だ。ニューヨーク・タイムズ紙は「このキャンペーンは効果がない。どれだけやったところで、天安門事件は人々の記憶から消えることはない」との中国国内の怒りの声を載せている。

 一方でワシントン・ポスト紙は対照的な報道姿勢である。中国国内には現在、驚くべき収入の格差やそれに伴う不安要因が存在し、緊張が高まっている。しかし、天安門事件以後、経済成長の恩恵に浴してきた新しい世代は、25年前には想像すら出来なかった生活水準を享受している。彼らにとっては、政治の安定が最も望ましいのである。

 例えばエリック・リーは46歳の投資家で、スタンフォード大学のMBAを持つ。彼はこの取り締まりの記事に安心感を感じるという。抗議行動が続けば政情が不安定になり、経済の上昇を止めることになるからだ。彼は「エジプトやウクライナの二の舞にはなりたくない」とその心情を吐露する。

 生活水準の格差が広がると同時に、思想・信条も2分化したのが今の中国の現状のようである。中国という大国がどのような方向に向かうのか、関心を持って見守りたい。

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Text by NewSphere 編集部