10年越しに…ロシア、中国へ天然ガス輸出契約 日本のエネルギー輸入にも影響大

 21日、ロシア国営ガス会社ガスプロムは、中国石油天然気集団(CNPC)と、天然ガス供給契約を締結した。ガスプロムは2018年から30年間、年間最大380億立法メートルを中国にパイプラインで供給するという。

 価格の面で折り合いがつかず、交渉は10年に及んだ。しかし、ウクライナ情勢をめぐり、状況が一変。欧州が経済制裁として、ロシアからの天然ガスの輸入量を減少させる方針を示した。そのため、ロシアは新しい輸出先を確保する必要が生じた。ロシアは中国に対し、税制優遇策などの譲歩案を示し、締結に至ったという。

【中露協力体制の強化と契約内容の行方】
 今回の契約締結には、中国の習国家主席とロシアのプーチン大統領が立ち会った。契約についてプーチン大統領は、「旧ソ連時代を含め、ガス分野で最大の契約だ」と述べ、中国とのエネルギー安全保障における協力関係を強調した。

 その一方で、ガスプロムは、まだ基本合意しただけで、これから様々な条件をクリアにしていかなければならない、とコメント。また、ロシアのエネルギー相も、年末まで政府間で交渉を行い、免税などを行うことで両国にとって契約が有益なものになるようにする、と述べた。細かい部分では、まだ隔たりがあることを示唆した。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、この契約により中露関係が強化されると指摘。一方、中国側は孤立するロシアの弱みにつけ込み、有利な条件を提示できると考えており、ガスプロムが厳しい譲歩を迫られるもの、と分析している。

【日露エネルギー協力の行方は】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、今回の契約により、対ロシア関係において中国が日本より優位に立ったと指摘している。日本もロシアと、より密にエネルギー協力関係を築きたいものの、アメリカが対露制裁を発表しているため、同盟国として、一定の配慮を示さないといけないだろうと論じている。

 一方で、2011年の福島第一原発事故の影響で化石燃料に頼っている日本は、ロシアとのエネルギー協力を外すことができない、という専門家のコメントを紹介。さらに、ロシアのウクライナに対する干渉を非難したものの、ロシアでの天然ガス田開発に対する投資を継続するかについては、状況を見極める必要がある、という茂木貿易産業大臣のコメントを掲載。エネルギー開発における、日ロの協力は進むと推測している。

【ロシアの対アジア エネルギー政策】
 今回の契約により、アジアの液化天然ガス(LNG)市場で、ガスプロムの存在感が拡大する可能性がある、とロイターは報じている。ガスプロムは、ロシア極東のウラジオストクにLNG基地を建設する予定だ。今回の契約で新たに中国向けのパイプラインも建設されることとなり、インフラも整備される。すべてが整えば、中国のほか、日本や韓国、台湾向けに建設予定のLNG基地を活用でき、アジア市場への輸出量が格段に増える、とロイターは推測している。

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Text by NewSphere 編集部