不名誉な検索結果は消せる 欧州でグーグル敗訴…「驚きの判決」と海外紙報じる

 EU最高裁である欧州司法裁判所は13日、1998年の新聞記事へのリンクを検索結果から外すようグーグルに求めたスペイン人弁護士の訴えを認めた。控訴は認められない。

【16年前の不名誉】
 原告は当時、社会保障費の未払いにより不動産を競売にかけられ、債務状況の詳細を含めた公示が新聞に掲載された。この件は現在すでに解決しているにも関わらず、原告の名前でグーグル検索するといまだにその新聞記事がヒットすることから、原告は検索結果からの除外を求めていた。なお、新聞社に対しては何の命令も下されていないという。

 裁判所は、検索エンジンは単なる「物言わぬパイプ」ではなく、合法的にアップロードされたデータであってもその「コントローラ」として積極的な役割を果たすものであり、提供するリンクについて責任を負わなければならない、との判断を示した。

 昨年時点では、裁判所は、グーグルにリンク先コンテンツの責任はないとの見解を示唆していたため、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「驚きの判決」と報じている。またフィナンシャル・タイムズ紙は、グーグルが米NSAのインターネット盗聴に協力していたとされる件に続いてのこの判決は、一層の痛手になるとの専門家の見方を伝えた。

【忘れられる権利】
 判決に対する姿勢は二分している。判決を歓迎する意見は、公益に反しないならばプライバシーは守られるべきだ、といったもの。一方、批判的な意見としては、検閲にあたる、検索エンジン会社などが個人からの膨大な削除要求に検討対処を追われる、などだ。

 このような検索結果からの削除要求は、ヨーロッパでは「忘れられる権利」として激しく議論されているものだ。専門家によれば、元々はフランスやドイツの、名誉を守るための決闘という文化に由来するものであり、ヨーロッパ特有的な側面がある。

 これに対しアメリカでは、ニューヨーク・タイムズ紙は、これが言論の自由を定めた憲法修正第1条に抵触すると断言した。ただし裁判所は、サーバーがヨーロッパ外にあるからといってヨーロッパの法を免れるわけではないと警告している。

【手術ミスに忘れられる権利はあるか】
 ウォール紙によると、具体的にどのような場合に削除が認められるのかについては、まだ何年も司法界での議論が必要なようだ。

 同紙は国際自動車連盟のマックス・モズレー元会長の2008年のSM乱交ビデオ流出事件について、グーグルが敗訴し検索結果からの排除を命じられたことや(同社は控訴中であるという)、スペインの外科医が乳癌手術の医療過誤訴訟について、1991年の新聞記事へのリンクを削除するよう、これまたグーグルが訴えられていることを指摘している。

 またニューヨーク紙も、「ビジネスマンは10年前破産したことへのリンクを抹消できるべきか?政治家が若気の至りだったと言って、飲酒運転の逮捕歴を排除できるのか?」と問いかけている。

【人の噂は75日では済まない、日本の晒し上げ】
 一方NHKは日本での事例を挙げている。有名人の来店をツイッターに書き込んだ店員について、書き込みの是非やその文面への非難が集まり、数時間でたちまちあらゆる個人情報が特定され、晒されてしまった事件だ。現在もその店員の名前で検索すると大量のページがヒットするため、働くことができず、人目を避けて暮らしている状況だという。

 これら大量の情報の本体そのものを削除して回ることは現実的ではなく、すでに外国語に翻訳されて全世界に拡散している場合もある。元々の発端が被害者自ら意図して行ってしまった不用意な書き込みやアップロードである場合もあり、さらにインターネット時代の情報拡散は速すぎて止めようがない。もはや「人の噂も75日」の時代ではなく、ただ一度の過ちがしばしば、永遠に取り返しのつかない事態となると、記事は警告している。

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Text by NewSphere 編集部