南極の氷床融解で、最大4m海面上昇も 制止不可能と米研究グループが警告

 西南極氷床の大部分が崩壊し始め、制止できないという警告が発表された。

【NASAとカリフォルニア大学の研究報告】
 米国航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所とカリフォルニア大学アーバイン校の2つの研究者グループは、ここ20年あまりの融解を調査した結果、氷河の後退は、元に戻ることが可能な範囲を超えている、と推測している。米国地球物理学会発行の『ジオフィジカル・リサーチ・レター』で発表された。

 カリフォルニア大学アーバイン校のエリック・リグノット教授は、西南極の6つの氷河だけで、数世紀中に海面を約1.2m上昇させるという。ただ、「すべての氷が海に流れ出すには数世紀かかる」としている(ニューヨーク・タイムズ紙)。

【ワシントン大の学研究報告】
 一方、米科学誌サイエンスで発表されたワシントン大学の研究は、将来を予測するためコンピューターモデルで調査。西南極のスウェーツ氷河が急速に融解しており、ここ数世紀で失われ、世界の海面が約0.6m上昇する、としている。

 ワシントン大学のイアン・ジョーギン教授は、これは「一時的な傾向ではない。2~10世紀にわたる大規模な崩壊の始まりだ」と語っている(ガーディアン紙)。

 また、スウェーツ氷河をはじめ、西南極氷床が全て消失すれば、最大4メートル海面が上昇するという。研究チームは、200~900年先のことだと予測している。

【崩壊は防げない】
 19世紀以来、世界的な海面上昇はみられるが、温暖化による海水膨張が最大の要因だとみられてきた。

 ただ、気候変動を起こす温室効果ガス排出を削減する思い切った行動をとっても、崩壊は防げないとリグノット教授は語っている。同教授は、「大きな丘や山が唯一、氷河後退を防ぐ」という。

【国連らの見解】
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の想定は、今世紀末までに海面が約0.9m上昇としており、今回の2つの研究より数値が低かった。IPCCの海面上昇予測は、西南極氷床の融解を考慮に入れていなかったためだ。

「温暖化ガスは南極の他の部分を不安定にさせる可能性があり、世界の沿岸都市の多くが放棄するほどの海面上昇を引き起こすおそれがある」というペンシルバニア州立大学の気候学者リチャード・アリー氏の見解を、ニューヨーク・タイムズ紙は掲載した。

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Text by NewSphere 編集部