オバマ来日も、中国よりウクライナ問題に集中? 不安な日本は“自立”の道へ、と海外紙分析

 アメリカのオバマ大統領が23日、来日する。領土問題等をめぐり中国と緊張が高まっていることなどをふまえ、海外各紙が行く末を分析している。

【ウクライナ問題で歴訪が台無しの危機】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(ウォール紙)のコリーン・マケイン・ネルソン氏は、「オバマ大統領は外交をアジアに基軸を置くといいながら、ウクライナ問題に気を取られて集中できていない」と指摘する。

 そのため、大統領を迎え入れる各国は、アメリカの自国への関心がウクライナ問題で逸らされないよう必死だ、と同氏は述べる。オバマ政権で東アジア問題の担当官を務めたこともあるジェフリー・ベイダー氏は、「各国は中国の脅威に対して“断固たる強い立場を取る”という言葉をアメリカから聞きたがっている」と分析している。

【アメリカは中国対策に集中せよ】
 フィナンシャル・タイムズ紙のギデオン・ラックマン氏も、ウォール紙同様、アメリカはウクライナや中東に気を取られていると指摘した。そのうえで、それよりも台頭する中国の脅威に集中すべき、との主張を展開している。

 中国は近く世界一の経済国になると見込まれており、長い目で見れば、アメリカが中国を一番のライバルと考えるのは当然であるとラックマン氏は言う。それにもかかわらず、アメリカの対アジア策は頻繁に注意を逸らされ、すなわち曖昧なままとなっている、というのが同氏の主張である。

 アメリカのアジア基軸政策は軍事面が強調されてきたことから、中国からは「中国封じ込め策」ととられてしまったと指摘する向きもある。しかし、これは必ずしも誤解ではないと同氏は述べる。中国を軍事的に抑止することは、最も重要な動機といってもいい、と同氏は言う。

 それよりも本当の問題は、そのことが対中国策としては効果的なわりには、同盟国を安心させる効果があまりでていないことだという。日本は、中国の一方的な防空識別圏設定や東シナ海での領土問題について、アメリカの中国に対する対応が甘過ぎることを心配している、と同氏はみている。

【日本がアメリカを見限る?】
 ジョナサン・ソーブル氏(フィナンシャル・タイムズ東京支局長)とリチャード・マクレガー氏が共同で同紙に寄せた記事は、安倍首相に近い人物が「アメリカは確実に弱くなりつつある」と語ったと伝えている。

 同記事によると、日本がアメリカの弱体化を懸念する根拠は、イラクやアフガニスタンなどの費用がかさむ戦争から撤退したことで国際的リーダーシップが失われつつあることや、シリアやウクライナの危機に対する対応にそれほど積極性が見られないことなどだという。日本政府は、オバマ政権の対応が日米同盟の安全保障についても不安を残し、台頭する中国の脅威に機能するのか不安視していると同記事は分析する。

 その間、日本側にも変化が生じていると同記事は指摘する。それは中国の台頭だけが原因ではなく、安倍政権自体が「アメリカへの依存と服従を減らし、より自立しよう」という方向へ進もうとしている、とワシントン大学の日本専門家ケネス・パイル氏は述べている。

 しかしそうはいっても、安倍首相はやはりアメリカにはアジアで大きな力を持っていてほしいと強く願っている、と同記事は述べる。それは、中国がアメリカに取ってかわり1番の大国になるよりはまだましな選択肢だからだ、と両氏は分析している。

 総じて、海外メディアの論調は、アメリカの変化が日中関係やアジアのパワーバランスにもたらす影響を中止するものといえる。

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Text by NewSphere 編集部