なぜ豪州に慰安婦像を? 韓国・中国系団体の議会働きかけに現地紙疑問 議会は結論見送り

 オーストラリア東部シドニー近郊のストラスフィールド市議会は1日、いわゆる「慰安婦少女像」の設置について議論した。

【議論の行方は】
 デイリー・テレグラフ(豪)紙によると、本件は公式には議会のアジェンダに上程されていなかったが、議論には市民120人以上が参加した。大挙して詰めかけた人々を収容するため、議事は普段の議場から大ホールに場所を移して行われたという。

 公開討議の後、非公開の審議を行った議会は、この問題について州および連邦政府の意見を求めることを決め、結論を出さなかった。

 各メディアは、この像が象徴する従軍慰安婦を、第2次大戦中に日本兵とのセックスを強要された20万人にのぼる女性たちだと紹介。韓国・中国や東南アジアの人々が中心だが、オーストラリア人やオランダ人もいたと紹介する。なお日本政府の調査では、日本軍が慰安婦を強制連行したことを示す公的文書は発見されていない。

【推進派】
 ストラスフィールド市民の25%以上は、中国系ないし韓国系である。デイリー・テレグラフ紙によれば、韓国系副市長のサン・オク氏は像の設置を支持し、「安倍首相は歴史をねじ曲げようとしている」と述べたという。

 市議会では、21歳の時にインドネシアのジャワ島で慰安婦をしていたというジャン・ラフ・オハーンさんの娘である、キャロル・ラフさんが、議論に参加した。豪公共放送局(SBS)に対してラフさんは、「戦争犠牲者の像は数多くあるが、戦争中にレイプされた女性のための像は無い。この像の設置は日韓と直接関係ない人々へも広く訴えるものがある」と語った。

 なおSBSによれば、在オーストラリア韓国大使館は、「慰安婦少女像の建設は、オーストラリア内の韓国系移民コミュニティが自主的に推進することだ。大使館はこの問題について発言しない」と述べたという。

【反対派】
 デイリー・テレグラフ紙は、在オーストラリア日本大使館が、像の設置は不適切であると表明したこと、日本の女性を中心とした市民団体『なでしこアクション』が既に1万以上の反対署名を集めたことを紹介している。

 同紙は、70年以上前の事を暴きたてるのは建設的でないし、慰安婦問題とほとんどつながりのないオーストラリアに設置することに対する疑問の声もある、と述べる。

 市議会で、日本とオーストラリアのハーフである大学生の岩崎光生(こうき)さんは「どうして70年前の憎悪の物語を取り上げるのか。それよりも、今起ころうとしていることを防ぐことに力を注ぐべきだろう。この像は憎悪を生むのみである。憎悪の種は果たしてどんな実を結ぶだろうか?」と懸念を示している(デイリー・テレグラフ紙)。

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Text by NewSphere 編集部