台湾市民、学生排除の政府に怒り 「中国とは話すのに、学生は問答無用で殴るのか」

 台湾の学生らが立法院(国会)を占拠してから、3月26日で8日目となった。中国との市場の相互解放を目指す「サービス貿易協定」を強引に進める政府に反対しての動きだ。25日、馬英九総統が、ようやく学生との対話に応じる姿勢を表明した。

 世論調査では、市民の半数が学生の行動を支持している。「学生頑張れ!」「暴力反対」──現地の声はインターネットを通じて発信され、日本の人々も情報にダイレクトに接している。

【黒く染まるフェイスブック 学生鎮圧に抗議拡大】
 フェイスブックのプロフィール画面が、次々と黒一色に染まっていく-。23日夜、一部の学生らが行政院(内閣)の建物に突入。翌24日未明、警察当局が警官隊と放水車で鎮圧し、学生・警察双方に130人以上のけが人を出し、学生ら60人以上が現行犯逮捕された。これに対し、台湾では市民の間に「平和的な座り込みを暴力で押さえ付けた」との批判が拡大。抗議の意志として、プロフィール画面を黒くする動きが広がった。

 1989年中国・天安門事件の学生リーダーの一人で、現在は台湾清華大学で教鞭をとる王丹(ワン・タン)氏。教え子たちが運動に参加しており、発生当時からその安否を気にかけていた。強制排除で警官に殴られ、頭から血を流す学生の映像が流れると、フェイスブックに「力で優位に立つ警察が、なぜ彼ら引き倒し、殴ることができる!?まだ子供なんだぞ!暴力はやめろ!」と非難した。

 批判の声をあげたのは、学生や支援者だけではない。台湾で大ヒットし、日本でも公開された映画「あの頃、君を追いかけた」(11)の監督で人気作家の九把刀(ギデンズ・コー)氏は「警察は静かに座っていた彼らを打ちのめした。路地に追い詰めて殴った。敵意のない民衆に警棒を打ち下ろした。もう選択の余地はない。国家暴力全面阻止!」と批判。

 また、90年の台湾民主化運動に触れた映画「GF*BF」(12、2014年6月7日日本公開予定)監督の楊雅喆(ヤン・ヤーチェ)氏は、「学生たちは逮捕されるような態度だったか? 政府は中国とはよく話し合うくせに、学生とは面会せず、丸腰の彼らを警棒で殴った」と怒りをあらわにした。

【続々届く医療や物資 ボランティアが支援】
 地元テレビ局の世論調査では、半数近い48%が学生の行動を支持。平和的な占拠を続ける学生たちに、市民からの支援も次々と寄せられている。

 立法院内には医師や看護師ら医療スタッフが常駐。物資調達はボランティアが支え、現場には水や食料などがどんどん届けられているという。行政院での鎮圧の翌日には、ネットで集まった有志約3500人が資金を出し合い、大手紙・りんご日報に当局を批判する意見広告を掲載した。

 また、25日には台北近郊からタクシー約150台が集まり、立法院横を運転手たちが「頑張れ!」と叫びながら通り過ぎ、学生たちにエールを送った。行政院突入で逮捕された学生リーダーの一人、魏揚(ウェイ・ヤン)氏(清華大学院生)は釈放後、立法院内で働くボランティアの医師たちに向け、フェイスブックで「大きな支えとなっています」と感謝の意を伝えた。

【占拠の立法院内 日本に24時間中継中】
 さらに、立法院内の様子は日本の大手動画サイト「ニコニコ動画」が24時間体制で生中継中。固定カメラの映像で学生たちの様子が手に取るように分かり、コメント欄には日本から声援、意見が続々と書き込まれている。関心を持った日本人がツイッターやフェイスブックで情報交換し、現地からの情報を共有する。マスコミ情報一辺倒だった海外報道が、ソーシャルメディアの普及で急速に多様化したことを、今回の問題は改めて示すこととなった。

「サービス貿易協定は台湾の中小企業に大打撃を与える」として撤回を要求する学生たち。馬総統は25日、ようやく学生の代表を総統府に招き、前提条件なしの直接対話に臨む意向を示した。これに対して学生側は総統府前での公開討論を要求。対話の行く末は未知数で、占拠は長期化の様相を見せている。

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Text by NewSphere 編集部