宇宙誕生の謎、解明へ一歩前進? アインシュタインも予言した「重力波」が観測される

 140億年程前の宇宙の誕生時に遡る、最古のシグナルを発見した、との発表が17日になされた。宇宙の成り立ちを説明する「ビッグバン理論」を証拠立てる発見であるとして、海外紙がいっせいに報じている。

 今回の発見は南極にある電波望遠鏡を用いた「BICEP2」というプロジェクトによってなされた。南極の寒冷かつ乾燥した空気は水蒸気をほとんど含まず、理想的な観測条件となっている。

【ビッグバン理論の証拠】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によると、重力波の発見は「宇宙物理学ジャーナル」に提出した2つの論文と記者会見によって発表された。また、6年間の観測で収集した原始的重力波によるマイクロ波放射パターンの画像も公表された。この重力波はビッグバンのかすかな残照であると考えられる。

 科学者たちは、自然の力が初期の宇宙で働いていたことのサインとその性質を求めてマイクロ波背景放射の方向を測定した。Bモード偏光と呼ばれる風車のようなねじれは、ビッグバン由来の重力波の痕跡の証拠となる。

 NBCニュースが伝えるところでは、グースやリンデを初めとする科学者たちは、宇宙が非常に短い(1/10^36秒)時間のうちに巨大に膨張したとする「インフレーション」理論を発展させてきた。この理論は現代宇宙論のかなめだ。重力波はこのインフレーションの間に著しく発生したとされ、アインシュタインの相対性理論においても存在を予言されている。

 ビッグバン理論によって、これまで集められたデータ内の奇妙なねじれのいくつかは説明される。BICEP2の発見は残った難題と取り組むためのデータを提供する。

 今回の発見によって、多くの仮説が退けられる。データに最も適合するモデルは、重力を除く基本的な力(電磁力や核力)が、宇宙誕生時点では一つのスーパーフォースに統合されていたというものだ。また、この発見は、この宇宙は「多元宇宙」として知られる異次元の海に浮かぶ1つの泡のようなもの、という見方を支持するとリンデ氏は言う。

【プランク望遠鏡による観測結果との矛盾】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、去年、別の科学者のグループが欧州宇宙機関(ESA)のプランク空中望遠鏡から得たデータを用いて、別のフィギュアを提示した。コバックチームが出したフィギュアの半分程度の大きさで、この差は科学者を悩ませた。

 プランク望遠鏡のデータの研究者の一人は、BICEP2の結果は説得力があり、「このシグナルは充分に大きく、空の部分は充分に澄んでいるようだ。このケースは銀河による影響ではないとするのに十分強力だ」と述べている。

 異なった測定値は新しい発見の妥当性について疑義を引き起こしている。プランクチームは解析前の追加データを持っており、今年遅くに最新の発見に対してテストするのに用いる計画である。

【他の観測結果が待たれる】
 ワシントン・ポスト紙によると、チリの山頂で同じくインフレーション由来のシグナルを観察中の「PolarBear」プロジェクトのリーダーは、今回の観察結果がおそらくは正確であると考えている。彼は「しかし、とても厳しい観測であるので、それが本当に実際に宇宙の始めからのシグナルであるという確信を持つために、空の異なる部分を、異なる技術を用いた、異なる実験で測定されたものを見たい」と述べる。

 他にも少なくとも1ダースの天文プロジェクトが宇宙マイクロ波背景放射を調査しており、今回の発見は、他のチームの参入によって追認または棄却されるだろう、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は今後に注目する。

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Text by NewSphere 編集部