中国人、強制連行で日本企業を集団提訴へ 止まらぬ“反日プロパガンダ”に海外紙も注目

 第二次大戦中に日本に強制連行され、炭鉱などで過酷な労働を強いられたとして、中国人元労働者37人とその親族が、日本企業に対して損害賠償を求め、北京市第1中級人民法院(地裁)に訴状を提出した。

 昨今中国政府による「反日プロパガンダ」が激化し、海外メディアもこれを報じる中、今後の対応が注目される。

【原告は賠償と謝罪を要求】
 ブルームバーグ・ビジネスウィークによれば、被告として挙げられているのは、三菱マテリアルと三井金属工業。原告団は一人当たり100万元(約1,700万円)の賠償と、日中両国の主要メディアでの謝罪の掲載を求めているという。

 同様の訴訟は日本国内では行われてきたが、いずれも棄却されている。日本は、1972年の日中共同声明調印後、日中間の請求権の問題は、個人の請求権も含め、存在していないという立場だ。

 今回の提訴は、中国の裁判所に持ち込まれたものとしては初のケースである。中国国際放送によると、中国外務省の華春瑩報道官は27日、日本に対し、共同声明の遵守と適正な処理を求めると述べたようだ。ただ、訴訟に関しては、中国の法院(裁判所)は法令に従って対処すると述べるに留まった。

【日本の過去を中国は利用】
『Blouin news』は、今回の訴訟に関しては、中国は賠償以外の目的を持っているとし、以下のように分析している。

 保守の安倍首相のもと政治的攻撃を高める日本に、中国は宣伝戦を展開している。日本が犯した歴史的残虐行為を利用することは、国際舞台での日本の信用を傷つけ、今の日本の政治的イデオロギーが、戦中の日本のイデオロギーと実はリンクしているのだと世界に思わせるという、中国の戦略の一部なのだ。

 もっとも、安倍首相の靖国参拝と政権内のそれを擁護するコメントは火に油を注ぐ形となり、中国の思うツボとなった。結果的に、中国に有利な立場を与えることになった、という皮肉なコメントもされている。

【中国ならではの論理でごり押し】
 英テレグラフ紙も、このところの中国の広報活動に注目している。

 同紙は、中国政府主催の外国メディア向けプロパガンダツアーが企画されたと報じ、南京へのツアーでは、再三にわたり、南京大虐殺とホロコーストとの類似性が強調されたと述べている。

 中国の習近平国家主席は3月にドイツ訪問の予定だが、ホロコースト記念施設の見学を希望したという。この要望はドイツ側に「即座に」拒絶された。同紙は、記念施設を訪れることで、習主席が間接的な日本への攻撃を狙ったことはほぼ確実だと述べている。

 オックスフォード大学のラナ・ミッター教授(現代中国論)は、第二次大戦終結における中国の功績に言及している。しかしそれゆえに、中国が「1945年の遺産を使って2010年代に主張をごり押し」していることも指摘している。

 同教授によれば、中国は、「(自国が)戦時中犠牲となったのだから、日本は中国に譲歩すべき」という論理を振りかざしている。しかし他国からすれば、それゆえ中国にさらなる利権が与えられることは、必ずしも納得できる論理ではないと述べている。

国際メディア情報戦 (講談社現代新書)

Text by NewSphere 編集部