中国、「抗日勝利」と「南京追悼」を記念日へ 露骨な反日煽動に海外メディアも違和感

 中国全国人民代表大会を前に、全人代常務委員会に「抗日戦争勝利記念日」の制定を目的とする立法決定草案が提出されていることが分かった。この草案が決定されると、9月3日が「中国人民抗日戦争勝利記念日」、12月13日が「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」に制定されるという。

【反日感情を扇動か?】
 今回の抗日戦争記念日の制定において、中国は、祝日の制定は、国家主権や領土の共有、世界平和を守る中国の立場を表明することになるだろう、とコメントしている。

 しかし、戦後70年近くたってから制定するのは「とても不自然」だ、とブルームバーグは伝えている。基本的に中国は、休日を増やすことに対し、生産性を低下させるとして、消極的である場合が多いという。中国では、旧正月前後の休暇(日本のゴールデンウィークに近い位置づけ)を利用して、帰省や旅行を行うのが一般的だが、労働者は休暇をとるために週末の休日を返上しているのが実態だという。

 そのような現状にも関わらず、中国政府が祝日の制定を進めようとしているのは、反日感情を扇動する目的があると、英BBCニュースやウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘している。元来、中国には「南京大虐殺記念館」など、中国の「屈辱の世紀」を、国民の記憶にとどめさせることを目的とした施設が各地に点在している。

 このように、中国政府が痛ましい記憶の風化を防ぐのは、悲惨な状況から中国を救いだす役割を担ったことを強調して、党の正統性を主張するためである。さらには、国民の党に対する不満を、外部の敵や脅威に向けさせるねらいがあるという。

【中国の苛立ちの表れか?】
 一方で、この制定は、中国政府の苛立ちの表れではないか、とブルームバーグは分析している。中国は、尖閣諸島の領有権を主張し、反日感情やナショナリズムをあおり、日本を交渉の場に引き出そうとしてきた。

 しかし日本政府が、尖閣諸島は日本の主権のもとにあることは明確で、交渉の意向がない姿勢をみせているため、中国政府が苛立ちを募らせたというのだ。

【日中の歴史的記憶に対する違い】
 北アジアの政治は、歴史的記憶に支配されている、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が論じているように、日中両国の間には歴史問題が介在している。

 こうした状況の中で安倍首相は、日本の自信と経済の回復を目指すため、歴史に囚われず、未来にむかって進むとしている。

 一方で、中国は歴史的記憶を呼び覚まし、現在の世代にも植え付けようとしている。今回の場合にも、こうした中国の姿勢が反映されているのではないか、と同紙はみている。

「南京事件」の探究―その実像をもとめて (文春新書)

Text by NewSphere 編集部