「日本は時代遅れ」の声も サウジアラビアと関係強化図る日本、アラブメディアはどう報じたか?

 サウジアラビアのサルマン・ビン・アブドルアジーズ皇太子が18日、公賓として日本を訪れた。サルマン皇太子は19日、天皇陛下と会食し、夕方には安倍晋三首相と会談した。安倍首相は2013年のサウジ訪問で、日本とサウジアラビアが多くの経済分野で包括的関係を構築するという合意を結んでいる。

【サウジアラビアとの合弁事業】
 サウジアラビアのアブナヤン・ホールディングと日本の東レは19日、サルマン皇太子と安倍首相出席の下、ダンマム市の汚水処理合弁事業について合意した。この82億円規模の事業のため設立された合弁会社トーレ・メンブレン・ミドルイースト社(TMME)は、浄化装置を製造、販売の他、技術指導も行う、と『Saudi Gazette』 が報じている。TMMEは、東レの生産技術と一流の品質管理を利用し、世界規模の生産工場を作ろうと計画しているという。

 サウジアラビアの首都リヤドの日本外交官は「日本はサウジアラビアにとって、4番目に大きな投資国だが、今後両国がお互いにより多くの投資を行うことを期待している」と述べた、と有力アラブ紙『Asharq Al-Awsat』が報じている。

【日本へのサウジ学生の留学促進】
『Al Alarabiya』によると、サルマン皇太子は22日、サウジの学生に会い、日本で生活している同国の学生たちに1万ドルの援助を行うと決めた。

 現在500人以上のサウジの学生たちがアブドラ・ビン・アブドルアジーズ国王の奨学金制度を利用し、日本全国で学んでいるという。ただ、同国の留学生数は世界全体では15万人で、比較すると日本はまだ留学先としては希望者が少ないようだ。

 同メディアは、学生たちが非公式の大使として、柔軟な外交的役割を担っている、と指摘している。学生の存在は、サウジからのエネルギー資源、日本からの最先端技術や車などの商取引以上に、両国の関係が長期的戦略的に重要なものだとするサウジ政府の考えを日本へ再確認させることに役立つからだという。

【日本は時代遅れの「古いアジア」か】
 サルマン皇太子の訪問は、刺激策が効を奏しない経済不況、軍備増強をすすめる中国からの圧力、同盟国アメリカからの要求などに日本が苦しんでいる時期に行われた、とアフシン・モラビ氏(ニューアメリカ・ファウンデーションのシニアフェロー)が『Asharq Al-Awsat』に寄稿している。

 同氏は、「何でまだ東京にいるんだ?北京へ着く前に迷子になったのか?」と同盟国アメリカでさえ、日本よりも中国に目が向いていることを皮肉ったというジョークを取り上げた。日本の専門家は、世界が「日本は時代遅れでつまらないが、中国は新しく刺激的」だとみていると話したという。実際、経済成長の鈍化や高齢化で、日本は、隣国の中国・韓国に比べ、国際的競争力を失っている、と同氏は指摘した。

 一方で、トヨタの売上が、アップル、サムスン、シェブロン、フォルクスワーゲンなどを上回ったという事実も取り上げている。そして日本は「古いアジア」と簡単に言い捨てられるべきではない、としている。同氏は、日本が世界有数の投資国で、もし米国債を売りに出せば世界は混乱するだろう。つまり、日本が”こける”わけにはいかないのだという。

 また、日本人は勤労の精神をもち、国の近代化、国民ひとりあたりの実質のGDPは、中国を大きく上回っていると指摘。「新しく刺激的」ではないかもしれないが、日本企業はいまだ熾烈な国際競争の第一線で競っており、見習うべきだと結んでいる。

サウジアラビア―変わりゆく石油王国 (岩波新書 新赤版 (964))

Text by NewSphere 編集部