5人死亡の“イッキ飲みゲーム”、海外SNSで流行 日本と異なる危険な事情とは?

 「ネックノミネーション」という、SNS上で行われるゲームが、イギリスを筆頭に、世界各国で流行している。だが、このゲームによって、イギリスやアイルランドでは、すでに5名の死者が出ているという。それほど危険なゲームが、なぜ流行しているのだろうか。

【ネックノミネーションとはどんなゲーム?】
 ネックノミネーションは、「イッキ飲みして指名」という意味だ。SNS上で、誰かから指名を受けたら、酒をイッキ飲みするところを撮影して、24時間以内に動画をアップロードしなければならない。そして、映像の最後で、次に同じことをする他の誰かを指名する――という流れだ。

 CNNによると、このゲームは、オーストラリア発だと考えられている。「ネックノミネーションは、ネット上でウィルスのように急速に広まっている」と、イギリスのある政党関係者は語る。また、すそ野が広がるばかりでなく、SNS上でウケようとする人たちによって、投稿される動画の内容も、次第にエスカレートしてきている。ふつうに酒を飲むだけでは飽き足らず、スーパーマーケットで女性が半裸になって酒を飲んだり、便器の中に酒を注いで、逆さになってそこから飲んだり、生きている金魚を酒といっしょに飲み込んだり――。このようなエスカレートぶりは、日本で起こった、Twitterの“炎上”騒動を思わせるものがある。(金魚の件には、イギリスの動物愛護団体からクレームがついたが、動画の投稿者は、金魚は撮影後に吐き出し、まだ生きている、とあとで釈明した。)

【アルコールの危険性にあらためて注目が集まっている】
 痛ましいことに、ネックノミネーションがもとで、イギリスやアイルランドで、少なくとも5名が命を落としている、とCNNは伝える。全員が30歳未満だ。短時間で大量の飲酒をする危険について、若者の認識が十分でないことが背景にある、と見られている。イギリスのある医師は、アルコールは、「いま自分が危ない状態にあると認識する能力」および「危険に対処する能力」を損なうものだ、と警告する。

 ハフィントン・ポスト(イギリス版)にブログをもつキャリー・アームストロングは、アルコールの乱用の危険性について、親が子供にちゃんと話さないために、子供は危険がないものと思っている、と指摘。そして、「ネックノミネーションのための完璧な環境を、わたしたち親が作り出したのだ」と訴える。

【SNSにおける集団圧力】
 CNNの記事は、SNSという空間における「集団圧力」、すなわち、仲間内からはみ出さないために、他人と同じことをする、という圧力についても触れている。

 息子がネックノミネーションに参加したのを知った、ある父親は、「私は息子に立腹していたが、それ以上に、この件に関係のあるSNSに立腹していた」とCNNに語っている。そして、このばか騒ぎを止めるために、SNS側で、速やかに何らかの手だてを講じるべきだ、と主張した。

 SNS最大手のFacebookは、この問題に対し、こう声明を発表している。いじめのように直接の危害をもたらすものなど、同社のルールに違反していると思われる案件については対処していく。しかし、今回のように、「一部の人が不快に思ったり、議論の的になると思う行為だからといって、必ずしもつねにわたしたちのルールに反するとは限りません」とのことだ。

【若者の飲酒事故は日本でも】
 日本では、ネックノミネーションは広まっていないが、かつて、イッキ飲みが流行したことはあった。大学生が死亡するという痛ましい出来事を経て、啓蒙活動が行われ、イッキ飲みは下火になった。それでも、飲酒がもとで亡くなったと見られる若者の数は、いまも、毎年、ゼロにはならない。

 昨年、大学生が飲酒がもとで死亡したと思われていた件について、「ジャパントゥデイ」は記事を掲載。その記事へのコメントで、ある海外の読者は、「日本人は、違法ドラッグだけが危険なものだと思っている。実際は、酒も立派なドラッグだ。中毒性があり、他のドラッグ以上に死亡原因となっている」と警告を発している。

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Text by NewSphere 編集部