携帯使用を我慢できれば食事が半額!? 中国レストランの新サービスが話題

 北京で人気の雲南料理レストランで、食事中の携帯使用を諦めることができれば、食事が半額になるというサービスが話題を呼んでいます。

 この新サービスでは、入店したら食事が終わるまで、携帯電話を紙袋に入れて封印します。これだけで食事代金を半額にしてくれるというもので、新店舗の開店を祝って、月曜日限定で提供されます。

 店側が、「携帯禁止」に目をつけた理由が、携帯電話がこれほど広まっていなかった頃の静けさを懐かしみ、食事に集中してほしいという純粋な目的からか、我慢は苦手でも経済観念に発達している中国人に対し、「携帯使用」と「半額サービス」の選択を迫るおもしろさを狙っているのか、判断をつけにくいところです。

【スマホの普及で問題となる公共の場でのマナー】
 スマホが普及し始めた当初は、主に米国内のレストランで、割引サービスをつけたり、携帯を使用しないとの誓約書にサインしなければ予約が取れないなど、「アメとムチ」で携帯使用を制限しようとする動きがありました。しかし、客によってスマホなどの端末からアップロードされる店舗情報が、集客に大きく影響するようになると、携帯は「マナーを守って使用するもの」へと格上げされてきました。

 日本でもスマホの普及率が高くなりましたが、公共の場では携帯で会話をする姿を見ることはほとんどありません。食事中のテーブルの上でブルブルと震えて持ち主の注意をひきつけたり、食事風景の撮影やブログへのアップに使われたりはしていますが、日本で携帯使用を制限するレストランは少なく、店側はあくまで、客のマナーに期待する姿勢を取っています。電車などの交通機関内でもそのマナーは生きていて、中国をはじめとした海外で、「日本人の携帯マナーはすばらしい」との称賛の声があがっています。

【携帯は豊かさの象徴、レストランの賑やかさは繁盛の証拠】 
 中国で、「最新の携帯を購入するために自分の子供を売った」という仰天ニュースが流れたのは、昨秋のこと。最新のスマホを所有することは、経済的豊かさのステータスであると考える人がいるのも確かなようです。これは極端な例だとしても、携帯所有率が急速に伸びている中国では、あらゆる場所で片手に携帯電話を握りしめる姿をよく見かけ、交通機関の中でも携帯電話の着発信を遠慮する様子はありません。

 また、一般的な中国料理店での食事風景を一言で表すと「喧騒」そのもの。レストランは大きなホールにいくつものテーブルが配置された、日本の結婚式のようなスタイルを取っていることが多く、それぞれのテーブルが周囲と競い合うように大声でしゃべりながら食事をします。そこへ携帯電話がかかってくれば、おしゃべりのボリュームはさらに上がりますが、レストランが賑やかであることは、それだけ客が入っていることの証明でもあり、注意を促す店員はいません。

【携帯使用の自由と半額の食事、どちらがより魅力的?】
 今回のサービス、基本的に公共の場での携帯使用を避ける日本人にとっては、携帯を封印するだけで静かな環境でおいしい料理を安く楽しめるお得な情報ですが、客にとって受け入れやすい制限だけに、店側にはかなりの負担となりそうです。

 一方で、公共の場での携帯使用マナーが浸透していない中国では、例え半額でも携帯使用が規制されることに拒絶反応を起こし、素通りしてしまう客も多いのだろうと想像されます。しかし、店の狙いが携帯禁止と食事代金半額を天秤にかけて迷わせるところにあるとすれば、迷った時点で宣伝効果はあったのも同じ。このサービスにおもしろさを感じた客はきっと、このレストランへと足を向けることでしょう。

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊 (中公新書)

Text by NewSphere 編集部